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書籍『安倍政権論―新自由主義から新保守主義へ』

K・T

  参議院議員選挙が始まりました。自民党・公明党の連立与党は憲法問題を重点政策の一つに盛り込みました。安倍首相は憲法「改正」を政治のスケジュールにのせることを公約として言明しました。
 さて、これこそが、安倍政権が戦後歴代内閣の中で際立って「画期的」であると位置づけられる理由なのだと、本書著者渡辺治教授は分析します。なぜならば、「この50年あまりの間、政権の座についた首相はだれ一人として改憲実行を口にしたものはいなかった」からだと。「安倍が政権公約で改憲を掲げたことは」「既存の保守政治の慣行を大きく転轍することを意識したもの」(p.9)だという認識をふまえて、安倍政権の本性と戦後保守政治の系譜の中での位置づけとを解明しつつ、安倍政権の政治の方向性を明らかにすることが、本書の課題であるとされています。
 本書は2部構成で、
第T部 安倍政権は何をめざしているのか
第U部 安倍政権の歴史的系譜―戦後保守政治のなかの安倍晋三
となっています。第T部では、従前の安倍政権論を素材に、その欠落部分からむしろ見えてくる安倍政権の本質と、ポスト小泉として登場した安倍政権の政策、ことに改憲政策を詳細に解明しています。第U部では、戦後保守政治史からみた安倍政権の位置を浮き彫りにします。
しかし本書の特徴は、それに留まるものではありません。著者渡辺教授の問題意識は明確です。安倍政権の本質とその目指すところを明らかにする目的は、その本質ゆえに、その狙いゆえにこそ、内包される矛盾と弱点を抉り出すことにあります。第T部、第U部での論考を通して、対抗軸とオータナティブを探ることに渡辺教授の主眼があります。その一貫性は、先に当サイト書籍『構造改革政治の時代―小泉政権論』でもご紹介したとおりです。
戦後保守政治の歴史的系譜の中で、既存の政治路線を転換させた節目となる政権として、渡辺教授は岸政権・中曽根政権を対照標本に「安倍政権は、岸政権、中曽根政権と異なり、自分の力で既存の保守政治の小国主義的方向を右に転換させる役割を果たしたわけではない(,,)」「安倍以前の諸政権、とりわけ小泉政権による軍事大国化の前進を待ってはじめて登場しえた政権」(p.197)と分析されました。15年に及ぶ軍事大国化の“最後のバッター”、安倍政権がどのような意味において“最後”になるのか。憲法「改正」を為し軍事大国化を完結せしめることで、“最後”となるのか、それとも政権与党が憲法「改正」をこの先二度と口にし得ない政治状況が生まれることによって“最後”となるのか。今回の参院議員選挙の結果は、いずれの意味の“最後”になるのか、に大きな影響を与えるでしょう。

ところで、本書タイトルのとおり安倍政権は、新自由主義的改革を一気に進めた小泉政権の継承者でありながら、そのスタンスを新保守主義においているものと思われます。その安倍晋三氏が何故、首相就任直後、お約束の訪米を後回しにしてでも、訪中・訪韓を優先させたのか。管見ながらこれを不思議に思っていたのですが、本書でその“謎”の一端が解けたように思います。同じ疑問をお持ちの方には、是非、本書を繙かれることをお薦めいたします。

渡辺教授には、当研究所も参加している映画「戦争をしない国 日本」製作委員会の様々なとりくみでもご発言いただいています。あらためてご案内します。
論文「国民は憲法とどう向き合ってきたか」
講演「国民は憲法とどう向き合ってきたか」


【書籍情報】渡辺治(一橋大学大学院教授)著 旬報社 2007年7月(定価 本体価格1500円+税)

 

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