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論文「軍事法制の変容と憲法九条」

K・T

 当研究所客員研究員水島朝穂教授(早大)(関連情報)の執筆論文が、法律時報7月号(特集「日本国憲法施行六〇年―憲法学に求められる課題」)に掲載されています。
 日本国憲法施行後この60年間「一方で、憲法との不断の緊張関係のなかで、他方で、その間の国際的、国内的諸条件に規定されて」きた「日本型の特殊な軍事法制」の変容を探るというテーマです。水島教授は、「変容」の三つの節目を次のようにとらえています。警察予備隊発足から80年代までの「専守防衛」とそこからの実質的離陸が始まった時代、90年代から昨年までの「国際貢献」をキーワードとした時代、そして今年に至る現代。
 第一の節目では、朝鮮戦争の際における海上保安庁の掃海艇が機雷掃海作戦に参加、第二の節目には湾岸戦争に海上自衛隊掃海艇のペルシャ湾への派遣、そして第三の節目、今年(2007年)5月には辺野古崎沖環境調査に海上自衛隊が参加し、掃海母艦待機・支援するといった具合に、「それぞれの時期において、地味な存在である掃海艇部隊が、象徴的役割を果たしてきた」という示唆は興味深いものです。
 交戦権否認・戦力不保持という徹底した平和主義を貫く日本国憲法の下で、「軍事なるもの」は「ひねくれた」変容を重ねてきた経緯が現在までたどられます。9条の文言に変更を加えずに、日本の軍事法制は、自衛隊の海外派兵をも「可能」にするところまで整備されてきました。
 しかしなお、「普通の国」の軍事法制の完成を妨げる「欠?」を埋めるために、自民党新憲法草案は、9条2項の削除とともに、76条の変更、即ち「自衛隊のより実戦化」が求められていることを背景に「軍事裁判所の設置」が掲げられたのだと教授は指摘されます。さらに現時点でも76条2項に抵触しない形での「自衛隊裁判所」の設置提言が自衛隊内部でなされていることに言及され、「有識者懇談会」が集団的自衛権行使容認の道筋の検討に入っていることと共に、明文改憲に拠らずとも目的を遂げる方途を探る、安倍政権の“両面作戦”を想起させられます。
 この「前のめりで、自衛隊に軍としての全属性を具備させる」動向に対し、教授は、「あえて9条2項を変えないという選択をすることで、『普通』になることから距離をとることこそ、合理的選択」と提起されます。明文改憲、解釈による実質的改憲、いずれの方向に対しても警鐘を鳴らす論文です。

 法律時報7月号は、本特集として、<総論>分野ではこの水島教授の論文をはじめ「ビラ配布規制が映し出す日本の立憲主義の現状」(阪口正二郎一橋大学教授)、「主権論争の意義と課題」(村田尚紀関西大学教授)他、<人権論>分野では「13条論の60年」(小竹聡拓殖大学教授)他、<統治機構論>分野では「選挙制度の変容と選挙制度論」(小松浩神戸学院大学教授)他、が掲載され、幅広く憲法学の課題にアプローチするものとなっています。

 さらに、私たちが憲法の価値を検証してゆくうえで、歴史的観点も欠かせません。連続講座「世界史の中の憲法」オンライン配信は、その時代の要請にこたえる内容です。配信期間は今月末までです。どうぞご利用下さい。

【書籍情報】法律時報2007年7月号特集『日本国憲法施行60年―憲法学に求められる課題』所収 日本評論社

 

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