法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

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書籍『憲法を生きる』

K・T

  ある一人の憲法学者の研究人生の軌跡をたどりながら、憲法施行60年の歩みを展望する、という企図の下に、本書は生まれました。自らの研究と、憲法をとりまく状況の歴史的経過とを重ね合わせ、生き生きとした口調もそのままに、憲法への想いが語られます。
 その憲法学者とは、奥平康弘教授。「九条の会」の呼びかけ人の一人として活躍されていることは多くの方がご存知でしょう。「ぼくたちの培ってきた憲法が、あるいはその中で培われてきた自分の憲法感覚というものが九条と切っても切れない関係にある」。教授が、「九条が変えられてしまったら、他のところだって無事ではない」と危機感を募らせるのは、ご自身の戦争体験が研究人生の原点にあるから。
 普通の人間の生活を、がんじがらめにする軍事的なるものへの嫌悪感。そして、勤労奉仕の作業中における外国人俘虜との出会い。“What is your name?”“My name is Carpenter.”「そのときの相手の笑顔がね。もうねぇ、非常に清らかというか、本当に人間味に溢れるスマイルをしましたよ。」先に名乗らず相手の名前を尋ねてしまったことを不躾だったかと後に自省しながら、しかし忘れられぬ俘虜の笑顔。この感性が、戦後、憲法研究者としての奥平教授の方向性を決定づけているように思います。
 大学一年のときに出会った「チャタレイ夫人の恋人」事件、アメリカ留学中に肌身で感じたマッカーシズムの残滓。公選法への問題提起、そして「知る権利」から情報公開制度の探求。表現の自由に関わる問題が、奥平教授のライフワークとなっていった経緯がよく分かります。教授の語る言葉の端々から、憲法研究史、学説・論争史、判例史が浮かび上がり、その時代の空気を伝える貴重な証言ともなっています。争点となる課題を法律適用上の問題や政策論に矮小化せず、常に憲法論的構成を意識する手法、そしてテーマに対する歴史科学的アプローチ、この二点が奥平教授の研究の根幹にあるのではないでしょうか。
 さて、奥平教授のこの縦横無尽の語り口を踏まえながら、各章ごとに、懇切丁寧な注が付されていることも本書の特徴です。憲法学を専攻していなくても、学説、判例、研究者とその著作物や研究のあらましが理解できるような工夫が凝らされています。その整理された資料的価値は大きい。さらに、本書発行年月日2007年5月3日、は本書にふさわしい、誠に“粋なはからい”といえましょう。

当研究所の連続講座「世界史の中の憲法」第6回のテーマは「国家と国民の歴史」です。表現の自由についての権威である奥平教授は「いったん表現の自由は、民主主義社会にとって必要な公共的価値を有する権利であると考えるならば、表現の自由は国家からの自由というだけでなく、国家に対して情報の公開を請求できる積極的な権利と構成することができるはず」と指摘されていますが、今回の講座は、その国家というものをより根源的に考える機会になるでしょう。オンライン講座(当研究所の連続講座「世界史の中の憲法」第6回「国家と国民の歴史」は)も是非ご利用ください。

【書籍情報】奥平康弘著 日本評論社 2007年5月(定価 本体2300円+税)

 

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