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書籍『人権・主権・平和 ― 生命権からの憲法的省察』

K・T
 著者は、当研究所客員研究員の山内敏弘龍谷大学教授。4月16日付“今週の一言”にも登場しています。
本書は、表題の示すとおり、基本的人権・国民主権・平和主義という憲法の基本原理ごとの三部構成で、各々につき著者の問題意識に沿って、学説論争及び判例の史的展開を踏まえた論点整理がなされています。そこに憲法原理の現代的課題というべき諸問題について、著者が重要な示唆を与えていることが本書の特徴となっています。
 しかし、何といっても最大の特徴は、これらのいずれのテーマに対しても「生命権」を基軸として、その観点から憲法の基本的原理に光を当てていることでしょう。従来説では、「生命権」を独立した権利内容とするよりも、むしろ幸福追求権の一つとして包括的に把握されるものと考えられてきました。しかしながら著者は、「生命権」を、他の人権とは並列ではなく相対的に区別された人権として「人権の中の人権」「切り札としての人権」と位置づけます。 
 そのことによって著者は、憲法の@人権原理においては、生存権がプログラムでもなく抽象的権利でもない生命権を核心とする具体的権利内容をもつことを明らかにできるA主権の問題では、前文と9条で軍事力不保持と戦争放棄をうたい自ら国家主権の重要部分を放棄した憲法の先進性を、「生命権」の価値で裏付けられるB平和主義の問題では、「生命権」論が国際的潮流となりつつある国家の安全保障から人間の安全保障へのパラダイムシフトの理論的支柱となり得る、と考えておられるように思います。
 もちろん本書では上記以外にも、死刑制度、天皇制問題、地方自治問題、国際貢献・「人道的介入」論など、「生命権」を切り口として憲法の諸問題が多岐にわたりってとりあげられています。

本書あとがきで著者は「20世紀から21世紀への世紀転換期において日本を取り巻く国際社会が大きく激動し、国家のありようそのものも問われる中で、日本国憲法が採用している人権保障、国民主権、そして平和主義に通底する憲法価値の原点が何であるかをこのような形でであれ問い直すことの意味はあるのではないか」と述べています。憲法は、普遍的価値原理を示しているものであると同時に、それら原理が生み出された歴史的経緯を無視しては理解できないものである以上、著者のいう“憲法価値”を歴史的に検証してゆく意義は大きいものと思われます。
 当研究所連続講座『世界史の中の憲法』第5回「戦争と平和の歴史」、第6回「国家と国民の歴史」を是非ご利用ください。オンラインでも受講できます。

【書籍情報】山内敏弘著 日本評論社 2003年3月 (定価 本体価格6,000円+税)

 

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