法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

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対談『私たちはまだ、自由を手にしていない』

H・T
憲法施行60年周年を迎え、憲法状況は非常に大きく動いています。では、憲法の基本概念である「自由」を私たちはどの程度手に入れ、きちんとした議論をしているでしょうか。 雑誌「論座」の「日本国憲法特集」の中で、加藤周一氏と樋口陽一氏が対談し、この肝心な「自由」について、言葉の混乱と鈍感が広がっていることを重大視しています。

 2人は、民主主義国家であるのに、選挙によって選ばれた人たちが選んだ側の人間に対して抑圧的になり、また、おカネとか宗教が国民を抑圧していると指摘します。そのような、政治や社会の権力との関係で「自由」な生き方を追求するというのが、近代立憲主義の少なくとも「建前」のはずでした。しかし、この、「自由」の根本を踏まえない改憲主張が噴き出していることに警鐘を鳴らしています。

 憲法調査会の議論で、日本国憲法は占領軍によって押し付けられたという主張は基本的に論破されました。しかし、安倍首相も改憲の主張の主要な論拠として依然としてこれを唱えています。2人は、根強い「押付け論」の根底には、そもそも明治期に米欧から入って来た近代化、合理的なものの考え方そのものへの反発があるという点で一致します。幕末に列強の武力の脅しに直面して結んだ修好通商条約は一種の敗戦条約であり、その結果として生まれたのが、明治の近代化でした。その意味では大日本国憲法も採用した立憲主義も「敗戦で押し付けられた」という歴史を正視ことの必要性を訴えています。立憲主義の受容は長いスパンで見なければならないことが教えられます。

 樋口氏は、自由の欠如、個人主義の欠如という状況にもかかわらず、今、日本で初めて多数派の中から「個人」が、「それはいいことだ」という形で出てきた文脈に注目します。それは、自由の中身を、企業、政治、大学から司法に至るまで、弱者をも巻き込み「競争」に特化させ、「個人」を「自己責任で競争する個人」と捉える文脈です。しかし、憲法思想史から見るとどうなのか。氏は、人権の始祖ともいえるジョン・ロックの人間観を起点として、現代の人権保障のための競争制限の憲法体系の歴史を解説しています。個人を「競争」の主体としてしか捉えられない結果、日本社会は、先進国型から開発独裁国型に変わりつつあり、このことは社会的経済的権力による個人の抑圧につながることが示唆されています。

 2人は、日本の古くからの文化の特徴として、「現在」という瞬間を重視する感覚的な文化に注目しています。元々、「現在」は過去から未来に連続する歴史の流れの一場面であるのに、「今」だけしか見ない文化です。その結果、しっかりした価値観を持った個人が育たず、逆に権力者の側から、個人に特定の価値観を押付け、憲法さえ個人の行為規範に変えてしまう改憲が目指されているという極めて重要な指摘をしています。

 法学館憲法研究所で開催している浦部主席客員研究員による連続講座「世界史の中の憲法(ライブ)(オンライン受講)」は、自由、人権、立憲主義など憲法の重要な概念を歴史の中に位置づけて根本から考える講座です。第1回目からネット受講できます。施行後60年も経過したのに、これらの言葉の意味が混乱したまま使われ、改憲の論議も急ピッチで進行している現在、是非お薦めしたい講座です。


特集「日本国憲法」:雑誌『論座』6月号(朝日新聞社)(定価780円)所収

 

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