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書籍『国民投票法―憲法を変える?変えない?』

K・T
 この4月12日、政府与党は、慎重審議を望む国民多数の声を無視して、「国民
投票法」案、改憲手続法案を衆議院で採決・可決しました。いまなぜ、“国民投票法”なのか。多くの国民はその中身を知らされないまま、事態は急速に動いています。
 この状況のさなか、“ちょっと立ち止まって考えてみよう”とよびかけるこの書籍の発行は、実にタイムリーだったと言えるでしょう。切迫した情勢下にありながら、事実を冷静に見つめ客観的に分析する著者の姿勢は、説得力があります。著者の問題意識は、いま何故国民投票法なのか、そして、今回の提出された法案が本当に中立かつ公正(フェア)なルール作りといえるのかどうか、という二点に絞られます。
 国民投票法案が出された歴史的経緯をふりかえって、サ条約発効直後の53年に法案が策定されながら閣議決定は見送られ、以後半世紀近く、法律を作ろうという本格的な動きはなかったと著者は言います。それが法制定の流れを推し進めるうえで大きな役割を果たしたのが97年、橋本政権下に発足した超党派の“憲法調査委員会設置推進議員連盟(のちに憲法調査推進議員連盟)”。こうした動きの出てきた背景として、著者は、これに先立つ村山連立政権時代に当時の村山首相が戦争責任を認める発言をしたことから、これへの反動として「自虐史観」論などの動きが目立つようになっていったことを挙げています。国民投票法制定に向けた流れが生まれる、その背後にも歴史認識をめぐる激しいせめぎあいがあったのだとする指摘は、大変興味深いものです。
さて、それでは今の法案の問題点は何か。著者は、改憲案が発議されたとき国民がそれを理性的に判断した上で投票できる仕組みか、民意が真に反映される仕組みか、という観点から(1)熟慮期間の問題、(2)メディア規制の問題、(3)広報協議会の問題性、(4)憲法審査会の設置(常設)、(5)条文ごと投票か一括投票か、(6)最低投票率の未設定、(7)運動規制の問題 など諸点をとりあげて詳解批判しています。
 いま、国民投票法、改憲手続き法の成立を急ぐ勢力は、「立法の不作為」を持ち出して、国民投票法の存在しないことがあたかも不正常であるかのごとく主張しています。しかしそれに対して、著者は「立法の不作為」とは、国会が国民の権利侵害を看過し救済のための立法措置をとらなかった場合のことであって、国会での改憲案の発議もない段階での国民投票法の未成立を「立法の不作為」とするのは、“意図的な誤用”と反論します。また、住民の暮らしに直結する「政策」を問う住民投票と、基本的人権や民主主義をうまく機能させるための枠組みそのものを定める憲法を問う国民投票との相違点の指摘も重要です。

 この書籍から、国民投票法を考えることは、結局のところ憲法そのものを考えることにほかならないのだということを改めて実感します。憲法は国家が国民に義務を押しつけるためにあるのではなく、権力者を縛って基本的人権を守らせるためのものであって、これを逆転させたいと意図する勢力こそが今、国民投票法の成立に血道をあげていると言わざるを得ません。
 当研究所の連続講座「世界史の中の憲法」(オンラインでも受講できます)第6回「国家と国民の歴史」で、憲法のもつ意味についてさらに確信を深めましょう。また、当研究所HPでは事務局からのご案内に、「事務局からのお知らせ―憲法施行60年!ともに学び考え、あなたができる意思表示・行動を」を掲載。合わせてご覧ください。

【書籍情報】豊 秀一著 2007年4月発行 岩波ブックレットNo.697 定価(本体480円+税)

 

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