法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

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書籍『市民の平和力を鍛える―people's power of peace』

K・T

 「平和力」とは、何か。決して眼に見える“力”ではありません。平和力の対語は何でしょうか。「軍事力」でしょうか。軍事力なら、確かに眼に見える力といえるでしょう。しかし、軍事力は「戦争力」の一部でしかありません。また、戦争状態でなければ平和であると断言することもできません。交戦中でなくても軍隊の存在が一般市民に被害をもたらすことはすでに私たちも経験済みのことですし、先進諸国による途上国への横暴、富の収奪、結果としての飢餓、そして環境破壊。これらすべてを含めて著書は“構造的暴力”と呼び、それへの対抗軸として「平和力」を構想しているものと思います。
 現在、改憲を目論む勢力が着々とその準備をしかけているのに対し、私たちは市民レベルでそれに対抗し得るどれだけの「平和力」をもっているだろうか。著者は厳しく問いかけます。著者は、決して楽観視していません。従来平和主義、平和意識を支えてきた社会意識が大きく変容していることに危機感をもち、憲法9条の理念が生かしきれていないこの社会で9条の内容実現を求める政策提言をする必要がある、とうったえます。
 では、日本の平和運動は何をしていくのか。
 著者は、工夫をこらした多角的なとりくみをよびかけながら、市民レベルの運動の中で二つのとりくみを紹介します。
 そのひとつは、国際民衆法廷です。著者の専攻のひとつに、戦争犯罪論があります。二度にわたる世界大戦や世界各地の悲惨な紛争を経て、人類が試行錯誤の末にようやく、戦争は国際法上違法であるという共通理解、戦争犯罪を許してはならないとする国際的なコンセンサスをかちとった歴史的経緯を踏まえつつ、民衆法廷は、現実の権力こそないものの、戦争犯罪を国際法に照らして断罪する、国際法を活用して平和力を鍛える試みなのだと著者は説きます。
 さて、いまひとつのとりくみは、無防備地域宣言。1977年のジュネーヴ条約第一追加議定書の民間人保護と無防備地域宣言を使って、自治体に平和無防備宣言をさせ、条例化させる運動です。これもまた、憲法第9条と、これに合致する国際法を活用して、自治体の平和力を鍛える試みだと著者は述べています。
 「そもそも、不戦条約から国連憲章への流れを受けて、さらに発展させたのが日本国憲法第9条」。憲法を国際法とのかかわり、世界史の中で捉えなおす新しい視座は、憲法の平和主義が現実から遊離した空論ではなく、歴史の真実に根ざしたものであることを改めて確信させてくれます。当研究所の連続講座『世界史の中の憲法』は、第5回に「戦争と平和の歴史」をテーマにとりあげます(オンライン受講もできます)。

 著者である前田朗さんには、当サイトの「今週の一言」でも語っていただいています。

【書籍情報】前田朗著。2006年9月、ケイ・アイ・メディアから「へいわの灯火ブックレット2」として発行

 

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