法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

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論文「いまこそ憲法の教育・普及・啓発の本格展開を」

T・O記

法学館憲法研究所では、2005年7月から8月にかけて、憲法意識調査を行いました。その調査の内容・目的と結果について分析を行なったのが、この伊藤真所長の論文です。
調査の結果、日本国憲法の戦争放棄、戦力不保持については94,7%が「知っている」こと、三権分立や象徴天皇制・国民主権についても、90%近い人が「知っている」と解答し、多くの国民が憲法のことをある程度知っていることが分かりました。しかし他方で、憲法に列挙されている人権規定になると、その認知度が下がることも分かりました。表現の自由や信教の自由については80%前後の認知度ですが、財産権にいたっては52%と半数をわずかに超える程度でした。朝日新聞の調査などからも、同様の傾向がうかがえることから、伊藤所長は、多くの国民は自分達の権利が憲法で守られているという実感をあまり有していない状況にあると指摘しています。
さらに、公務員の憲法尊重擁護義務については、「知っている」が45,9%で、「知らない」の48,6%を下回りました。国民の権利を守るために政治権力の行使を抑制するのが憲法であり、公務員の憲法尊重擁護義務はそれを端的に表す条項であるにもかかわらず、そのことを認識していない人が多いことについて、伊藤所長は、強く懸念しています。朝日新聞や読売新聞、NHKなどによる調査でも、公務員の憲法尊重擁護義務についての認識を問う調査がなく、それどころか、国民の義務を書き込むべきではないかという調査まで行なわれたことについて、「立憲主義についての理解に欠ける」と批判しています。
続いて、憲法「改正」についての意識調査についてです。研究所の調査では、「改憲論議をすすめるべき」との意見が32%、「すすめる必要がない」も30%弱、「どちらともいえない」も30%弱と、通常の世論調査と異なる結果が出ました。これについて、伊藤所長は、本件調査が憲法の講義を受講している学生らを多く含んでいることがその理由ではないかとしています。なお、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞などの調査では、60%前後の人が「改正する方がよい」と答えているそうです。しかし他方で、9条については、研究所の調査でも、新聞各紙の調査でも、「改正すべき」という意見は30%前後となっています。加えて、9条の見直しについても、自衛隊の存在を明記するにとどめるとする見解が多数を占めており、自民党改憲案が目指すような「自衛軍」とすることには消極的な人が多いとされています。
また、9条以外の条文については、変えるべきとする人は、9条よりもさらに少ないという結果も出ています。衆参両院の憲法調査会の報告書についても、「知っている」は42%弱と低く、改憲への国民の関心は低いと伊藤所長は指摘しています。
こうした結果を受け、伊藤所長は、改憲の前に、現憲法の基本的な内容を国民に理解してもらう必要があるとし、マスコミに対しても、立憲主義の考え方を中心にした世論調査を求めています。
私も、一般の市民と話す中で、「憲法とは何か」ということを知らない人が以外に多いと実感することがあります。憲法の役割や内容をきちんと理解しないまま、世論に流されて改憲に進んでしまうことが果たして日本にとっていいことなのか、改めて市民の皆さんにも考えてほしいと思います。

【論文情報】法学館憲法研究所編『日本国憲法の多角的検証』(日本評論社、2006年)所収

 

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