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論文「国際社会における法の支配と民主主義の確立」

T・O
2000年9月に、国連ミレニアムサミットにおいて、21世紀の国際社会が取り組むべき課題を定めた「国連ミレニアム宣言」が採択されました。ここには、国際問題における法の支配、民主主義の推進、基本的人権の尊重の国際的な強化などが盛り込まれました。これらの課題が、日本国憲法の精神からも支持されるべきことを論じたのが、この山内敏弘教授の論文です。

国際社会は、各主権国家の主権的な平等性を基礎に構成されています。そのため、国際社会の法も、主権国家が同意した場合には、当事国を拘束しますが、同意しなければ、拘束されません。これは、大国が小国を支配することを防ぐ一方で、国際社会における法の支配を妨げてきたと山内教授は指摘します。こうした問題について、国際司法裁判所と国際刑事裁判所の問題に即して、検討がなされます。
国際司法裁判所については、第一に、国のみが当事者となります。言い換えれば、個人やNGOは国際司法裁判所で訴訟の当事者になれません。しかし、個人に対し、重大な人権侵害があれば、国際司法裁判所による法的な手続を踏まえた解決が、法の支配の確立に資すると山内教授は言います。また、国際司法裁判所に強制管轄権が認められていない点の問題点も指摘されています。
また国際刑事裁判所について、日本のほか、アメリカが加盟しておらず、自由や法の支配を理由に他国へ軍事行動を行っていることとの矛盾点が批判されています。また、国際刑事裁判所は、(1)集団殺害、(2)人道に対する罪、(3)戦争犯罪、(4)侵略の罪、以上4つの犯罪類型について、裁判管轄権を持ちます。しかし、「侵略の罪」については、国際的にもきちんとした定義がなく、今後、明確化が必要であると指摘されています。また、安保理の権限との関係も明確ではなく、問題点とされています。なお、日本は締約国ではないですが、自衛隊員が締約国内で上記の犯罪を行った場合、国際刑事裁判所は裁判権を行使できます。この点は、国際社会における法の支配の確立にとって重要な意義を有すると評価されています。
次に、山内教授は、国際社会における民主主義の確立が論じています。現在でもなお、民主主義をとらない国家や地域があり、民主主義国家への移行について国際的な支援が必要とされます。この点において批判されているのが、イラクに対するアメリカの対応で、フセイン政権打倒のためとはいえ、軍事介入は、国連憲章違反と批判されています。また、国連のあり方として、総会ではなく、安保理が国際平和問題についての最終的な権限を持つこと、安保理の構成や権限の問題が指摘されています。
最後に山内教授は、21世紀の国際社会の動向にあわせて憲法を変えるべきだという議論に対し、むしろ国際社会は、法の支配・民主主義の確立という観点から多くの問題を抱えており、その課題克服のためには、日本国憲法の理念が支障になるどころか、適合的だと主張します。そして、それこそが国際的平和の達成にもつながるとして、改憲ではなく、憲法に現実を合わせていく方向性が重要だと主張しています。
「国際貢献」というと、自衛隊やNGOが現地で行う活動を思い浮かべる人が多いと思います。そうした中で、法の支配や民主主義というシステムを広げていく必要性を主張する山内教授の論文は、日本国憲法の下で行なうことができる国際貢献のあり方を考えるに際して、非常に示唆的なものであるように思います。

【論文情報】法学館憲法研究所編『日本国憲法の多角的検証』(日本評論社、2006年)所収

 

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