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論文「世界平和と国際協力NGO」

T・O
世界平和を目指して、世界中で様々な個人・団体が活動をしています。その中で、非政府組織(NGO)が果たしうる役割について論じたのが、熊岡路矢氏の論文です。熊岡氏は、国際NGOである日本国際ボランティアセンター(JVC)の代表理事です。
熊岡氏は、NGOが自国政府から独立して働くことから、人道援助・協力に必要な中立性・公平性などにおいて、政府よりも優位にあることを指摘します。また、こうしたNGOが紛争地域で活動することで、権力への監視、紛争地域の状況を国際社会へ伝えること、国際社会の声を現地へ届けること、当事者の信頼を得ることで紛争の調停・仲介の活動につなげることができることなどのメリットがあるといいます。
日本においても、1960年代後半から70年代にかけ、紛争地域の市民との連帯と交流を目指す団体が多く生まれました。特にベトナム戦争の影響が大きかったと熊岡氏は言います。戦争に苦しむ地域の人々への人間的関心と共感に基づく人道支援活動は、現在も続いています。こうした活動は、故・栗野鳳氏の言葉を借りれば、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有する」とする日本国憲法前文の精神の発露であると指摘されています。
その上で、熊岡氏の活動に基づいて、NGOが果たす役割が語られています。まず、カンボジア(インドシナ)の事例についてです。インドシナ難民は、ベトナム戦争後に社会主義化したベトナム・ラオス・カンボジアの体制になじめず、難民化した者たちです。熊岡氏は、1980年頃から彼らに対する支援活動を3−4年続けたそうです。しかし、難民支援だけでは難民問題は解決しないという認識に至り、カンボジア国内での人道支援・復興協力を始めたそうです。そうした中で、1991年に和平が達成されました。熊岡氏は、カンボジアの国際的孤立からの脱却、援助、平和外交の促進などに関与したNGOとして、いくらかでも役に立てたことを喜んだといいます。このほか、湾岸戦争以後の経済制裁に苦しむイラクにおける人道支援活動についても紹介されています。また、費用対効果も、NGOの方が優れていることが表で示されています。
熊岡氏は、軍隊が人道支援を行うことについて、軍服は恐怖心をもたれやすいこと、軍は国益で動くため、中立性・公平性を確保しにくいことなどの問題点を指摘しています。
最後に、今必要なのは、憲法を変えて「戦争をできる国」にすることではなく、これまで不十分であった平和外交・国際協力・人道主義を明確にする方向での政策であるとしています。
NGOの一員として、紛争地域で人道支援活動を行ってきた熊岡氏の指摘は非常に説得的です。政府は、「人道支援」として自衛隊をイラクに送りましたが、果たして本当にそれでよかったのか。「国際貢献」「人道支援」のあり方を考えるのに、非常に示唆的な論文だと思います。

【論文情報】法学館憲法研究所編『日本国憲法の多角的検証』(日本評論社、2006年)所収

 

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