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論文「国連憲章と日本国憲法−武力行使への関わりを中心にして」

T・O

民主党を中心に、国連軍への参加を可能とするための9条改憲が主張されています。そこで、国連憲章における武力行使と、日本国憲法第9条の平和主義との関係について、政府見解を歴史的に検討したのが、この浦田一郎教授の論文です。
浦田教授は、戦後から1950年代にかけては、国連軍に自衛隊が参加することが憲法上可能かどうかについては、その可能性を否定しない見解、否定する見解が見られるとしつつ、当時はまだ本格的に論じられておらず、未確定であったと分析します。
ところが、1960年代に入り、池田勇人・佐藤栄作政権期には異なる答弁が見られるといいます。例えば、池田政権下において、林修三法制局長官が、国連警察軍の行動への参加が憲法9条に反するとはいえないと答弁しています。また佐藤政権の下で、高辻正巳法制局長官も、国連軍への参加が9条に反するとはいえない旨、答弁しています。しかし、高辻長官は、国連組織の任務に武力行使が含まれている場合、憲法9条との関係で問題になるとも述べています。そのため、浦田教授は、国連軍への参加が憲法上可能だとする発想が見られたが、それが定着したわけではなかったとします。
1960年代後半になり、武力行使を伴う「海外派兵」と、武力行使を伴わない「海外派遣」を区別する議論が確立しました。これに基づき、1980年には政府統一見解において、国連軍の目的・任務が武力行使を伴うかどうかによって判断する定式化が行なわれました。すなわち、国連軍の目的・任務が武力行使を伴う場合、自衛隊の参加は憲法上許されないが、武力行使を伴わないものであれば、自衛隊の参加は憲法上許されないわけではない、とされたのです。さらに1990年には、「参加」と「協力」が区別され、憲法上禁止されるのは、武力行使への「参加」であり、武力行使を伴うものへの「協力」であれば、合憲となるとされました。
さらに、イラク特措法の審議の中で、武力行使と一体化しない限りで、武力行使を伴う多国籍軍への自衛隊参加は違憲ではない、つまり、多国籍軍の活動ごとに武力行使かどうかが判断されるという見解が、秋山收法制局長官から示されました。これを踏まえ、政府統一見解がだされ、「参加」と「協力」の区別によって議論が整理されました。しかし、この「参加」という文言は、一般的な意味と厳格な意味の区別がなされ、多国籍軍の一員として加わるという広い意味での参加と、多国籍軍の司令官の指揮下に入りその一員として行動するという厳格な意味での参加があるとされました。そして、憲法上許されないのは、厳格な意味での参加だとされました。
浦田教授は、1960年代後半に確立した現行政府解釈の基礎には、自衛隊の海外派兵に対する国民の強い警戒心があったとし、90年代以降の現実の中で、その警戒感がよりいっそう求められているとして注意を喚起しています。そして最後に、日本国憲法の平和主義を国内的・国際的に実現する努力をすべきであると結んでいます。
憲法9条をめぐる議論については、しばしば「神学論争」だと揶揄されます。しかし、浦田教授の論文からも明らかなように、自衛隊やその海外派兵の是非をめぐる政府見解が変遷し、細かな文言解釈に走ったことこそ、「神学論争」を作り出したのではないでしょうか。改めて9条が制定された意義を確認し、それを世界的に広げていく努力が、今こそ必要だと思われます。

※この論文についての浦田一郎教授の発言はこちら

【論文情報】法学館憲法研究所編『日本国憲法の多角的検証』(日本評論社、2006年)所収

 

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