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論文「各政党の憲法観」

T・O

 1994年の「政治改革」以降の流れの中で、自民党と民主党という保守二大政党化の流れが生まれました。この両政党はいずれも改憲を主張しています。この両政党による改憲論の状況と憲法観を分析したのが、ここで紹介する上脇博之教授の論文です。
 自民党は、結党以来、一貫して改憲の立場にあります。近年では、全面「改正」を狙っています。他方、野党第一党の民主党は、当初は「論憲」という立場にありました。これは旧社会党出身者を抱えているという背景があります。その後、党憲法調査会の議論等を経て、「創憲」という言い方で改憲の方向へシフトしました。
 しかし、足並みはそろっていません。この足並みの乱れは、各政党の憲法観に起因するようだ、と上脇教授は指摘します。その憲法観の違いとは、第一に、「憲法とは何か」、という点にあります。民主党は、憲法とは、近代立憲主義の理念に基づき、公権力の行使を制限するもの、と見なしています。これに対し、自民党は、国家目標や国民の行為規範として憲法を捉えています。
 また、平和主義についても、自民党と民主党には違いが見られます。自民党が国連にほとんど言及することなく軍事的「国際貢献」や集団的自衛権を強調・重視するのに対し、民主党は国連を中心とした軍事的「国際貢献」を重視します。ただし、民主党も改憲による集団的自衛権の行使を否定するものではない点に注意が必要です。以上のほか、自民党と民主党には、国家像の違いなども見られるというのが上脇教授の分析です。
 こうした足並みの乱れを認識したためか、自民党の改憲論は、民主党の改憲論者も賛同しやすい方向へと向かいます。それが2005年11月に発表された自民党「新憲法草案」です。これは、表面上は現行憲法をベースとし、復古的な色合いはほとんど見られず、集団的自衛権への言及もありません。しかし、上脇教授は、このような「一見すると穏健な改憲論」に対しても、警鐘を鳴らします。これらの改憲案は、集団的自衛権の行使を否定するものではなく、解釈で導くことが可能なものになっているからです。
 上脇教授の分析によれば、自民党と民主党の憲法観には、共通する部分がありますが、異なる部分もあります。また、上脇教授は、両党の憲法観の違いに加え、2005年9月の総選挙で与党が圧勝したことや、旧社会党出身者を抱える民主党の党内事情などから、民主党は自民党に当面は歩み寄らないだろうといいます。
 上脇教授の言うとおり、民主党が自民党の改憲案に歩み寄ることは、民主党が政権奪取を目指して自民党と対立する姿勢をとる以上、当面はないでしょう。加えて、自民党は、「新憲法草案」に自民党らしさがあまり見られないとの批判を受けて、より保守的・復古的な草案への修正を示唆しています。そうなれば、ますます民主党が歩み寄ることはなくなると思われます。他方で、共謀罪の審議の際に、自民党が民主党案を丸呑みするという作戦に出たように、民主党が憲法草案を出した場合に、自民党がそれに乗る可能性もあります。両政党が今後、改憲に向けてどのような動きをしていくのか、今後も注目していく必要があると思います。

【論文情報】法学館憲法研究所編『日本国憲法の多角的検証』(日本評論社、2006年)所収

 

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