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論文「この国の『憲法感覚』を診る」

T・O

「憲法感覚」とは、本論文の著者で、当研究所の客員研究員である水島朝穂教授によれば、「憲法についてどう向き合うか」を表示するものです。この「憲法感覚」という視点から、衆参両院憲法調査会の報告書や自民党「新憲法草案」などを検討するのが、この論文です。
まず、2005年4月に提出された衆参両院の憲法調査会報告書については、「改憲に向けたアリバイ的な意見集」と切り捨てます。中山太郎氏を会長とする衆院憲法調査会報告書で、9条2項改定を是とする違憲が多く述べられたとして、その方向性が示唆されたことについて、「調査会の設置目的からすれば、ミスリード」と診断します。また、参院憲法調査会の報告書については、議員定数不均衡が5倍を超える参議院について「参院の憲法感覚が疑われる」とする社説の一節を紹介し批判しています。そして、憲法調査会報告書は、政治家たちの「憲法に対する意見集」にすぎず、棚上げにすべきだとします。
続いて、自民党が2005年11月に発表した「新憲法草案」についてです。この「草案」は、水島教授によれば、自民党の従来の主張を控えたものとなっています。これは、ターゲットを9条2項改定に絞ったからだとされます。にもかかわらず、9条2項の改定だけではなく、憲法全文を書き換えるべく、「新憲法草案」としたのはなぜか。これは、憲法改正国民投票において、個々の条文ごとにやるよりも、一括で問うた方が、改憲を通しやすいと考えたからではないか、とします。また、この「草案」の問題点として、(1)前文が、平和的生存権などを削除するなど、理念を欠いていること、(2)9条2項を削除したため、「軍事的合理性」を貫徹させられる憲法に転換していること、(3)障害により差別されない権利、犯罪被害者の権利などの人権条項が「思いつき的」に追加されているが、内容が空虚だったり、あるいは学説で構築された権利の内実を矮小化したりするものばかりであること、(4)改憲手続が緩和され、憲法改正の「重さ」が弱められていることなどを指摘しています。
以上の診断のあと、水島教授は、「憲法感覚」を磨くことの重要性を説きます。そして、「護憲」を自明のものとすることなく、常に検証可能なものとして、対象化する必要があるという認識から、「揺るぎある護憲派」と「揺るぎある改憲派」を前提とした議論を提唱します。その際、「外からの眼差し」にも配慮する必要があるとして、韓国における水島教授の体験から、9条改憲の「歴史的限界」や、旧植民地との「対話」の重要性を指摘します。
日常生活の中で、憲法を意識したり、憲法について考えたりすることは、あまりないでしょう。しかし、そのために「憲法感覚」を鈍らせてはいけないと思います。憲法を制定するのは、主権者である私たちです。ですから、「憲法とは何か」という点を踏まえつつ、その憲法に対して自分はどう向き合うのか。主権者の制定した憲法に拘束される政治家たちから改憲が声高に叫ばれている今こそ、私たちの「憲法感覚」を磨いていく必要があると思います。

【論文情報】法学館憲法研究所編『日本国憲法の多角的検証』(日本評論社、2006年)所収

 

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