法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

法学館憲法研究所

Mail info@jicl.jp
 
今週の一言
憲法情報Now
 憲法をめぐる動向
 イベント情報
 憲法関連裁判情報
 シネマ・DE・憲法
 憲法関連書籍・論文
 ■今日は何の日?
憲法Voice
研究所・客員研究員紹介
中高生のための憲法教室

憲法文献データベース
日本国憲法全文
リンク集
 
事務局よりお知らせ
賛助会員案内
メールマガジン
ご意見フォーム
サイトマップ

憲法情報Now<憲法関連書籍・論文>

 

論文「グローバル化のなかの日本経済と改憲の経済的基礎」

T・O

自民党の新憲法草案は、もっぱら9条改憲を狙ったものと認識されていますが、実はそれだけではありません。福祉国家の根拠条文である生存権保障をうたった25条もそのターゲットとなっています。新自由主義のもとで、福祉国家の解体も目指されているのです。それを論じたのが二宮厚美教授のこの論文です。
 二宮教授は、自民党の新憲法草案の中に、3つの福祉国家の解体の仕組みがあるといいます。まず、財政健全主義です。これは、赤字財政の禁止措置を主張することで、福祉国家型財政の膨張に歯止めをかける役割が期待される条文だといいます。第二は地方自治体に福祉国家の機能をゆだねようとしている点です。そして、第三に、地方自治の行政において、住民に責任と負担義務を課し、自治体財政を地域的受益者負担主義のもとに再編しようとしている点です。こうした動きを、二宮教授は「福祉国家の分権的解体」と呼び、「ナショナル・ミニマム保障の軽視」だと批判します。
 このような戦争国家化と新自由主義的国家改造という改憲の二つの大きなねらいが生まれてきたのは、「経済のグローバル化」という背景があると二宮教授はいいます。この「経済のグローバル化」というのは1990年代以降に生じた動きで、その特質は、地球規模での市場化、主体が多国籍企業であること、IT革命の進行にあるとされます。二宮教授は、この「経済のグローバル化」の中で、市場が世界的に膨張する一方で、その市場の主体である企業は母国を持ち、その母国は領土が限定されているため、そこに矛盾が生じると指摘します。これを解決するのが、多国籍企業が立脚する市場原理にそって、母国国家の影響力を拡大する道、いわゆる「新植民地主義」です。この中心がアメリカであり、「核とドルの傘」でその実現を目指しています。二宮教授はこれを「新自由主義的帝国主義」と呼びます。
 こうした中で、日本の大企業も多国籍化します。そして、企業の負担を軽くするために福祉国家の解体が目指され、他方で、海外での経済活動を守るために、軍事国家化が目指されることになります。それに対応するのが、自民党の改憲草案ということになります。
 小泉政権の下で、経済格差が拡大していると指摘されています。この「経済グローバル化」に対応した改憲は、この経済格差をより一層拡大してしまうのではないでしょうか。二宮教授が、論文の最後で指摘するように、新自由主義的帝国主義の時代だからこそ、平和・福祉を希求する者には、現憲法の平和・福祉国家理念が大切であると思われます。

【論文情報】法学館憲法研究所編『日本国憲法の多角的検証』(日本評論社、2006年)所収


 

[今週の一言][憲法情報Now][中高生のための憲法教室][憲法文献データベース][事務局からのお知らせ]
[トップページ]