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論文「『改憲政治』・二層の文脈ーー「グローバル安保体制」の形成と「日本型政治」の終焉」

T・O

現在、改憲論が各界から強く主張されています。次期自民党総裁最有力候補の安倍晋三氏は、改憲を政治日程にあげるとまで公言しています。こうした改憲論がどのような文脈で生まれてきて、現在どのような状況にあるのかを分析したのが、加茂利男・大阪市立大学教授の論文「『改憲政治』・二層の文脈」です。
この論文で、加茂教授は、改憲政治を動かすのはグローバル資本主義とグローバル集団安保体制にあるとします。そして、グローバル資本主義を背景とした改憲推進要因を、グローバル政治とナショナル政治の「二つの文脈」から分析します。
グローバル政治の文脈においては、1980年代に勢力を持ち始めた「新自由主義」が、特にアメリカにおいて先鋭化し、ネオコンとなって政権の中枢をコントロールし始めたところに注目します。このネオコンたちの思想を端的に表したのが「ブッシュ・ドクトリン」です。この「ブッシュ・ドクトリン」には、「帝国」の自負と、その「帝国」に対する「テロリズム」への不安が同時に現れています。そこで、「自由を享受する国は、積極的にテロと戦う責務を負っている」と述べられています。日本も、小泉政権がこのブッシュ・ドクトリンへのコミットを示しました。
ナショナル政治の文脈において、1955年ごろから1990年代初頭にかけては、憲法問題を棚上げした利益政治が行なわれ、軽武装・対米依存の安保政策の下で、憲法の定着を見ました。もちろん、憲法問題の棚上げの中で、きわどい憲法解釈や法理論の操作が行なわれています。
1990年代になり、小沢一郎氏によって、「国際貢献」を行う「普通の国」になるための改憲論が唱えられ、国際協力としての集団安全保障体制への参加が必要ではないかという意識が強まりました。他方、経済大国となった日本に対して、欧米から「フェア」な競争のための「構造改革」が求められました。こうしたことから、日本の経済が「グローバル(=アメリカの)標準」への適合を求められ、日本経済のグローバル資本主義へのどうか作用により、軍事・安保の面でもグローバリズムへの適合に進まざるを得なくなった、と加茂教授は指摘します。そして橋本内閣の下で行なわれた「構造改革」により、「グローバル・スタンダード」への適合が打ちだされ、日本も経済的・政治的にグローバリズムへの道を歩みだしました。
このように、グローバル政治・ナショナル政治という二つの文脈で、グローバル資本主義・グローバル集団安全保障の論理が、日本の改憲政治を動かしてきたと加茂教授は結論づけます。しかし、9条を巡る議論の錯綜などから、自民党内でも意見を完全にまとめることができておらず、他方で「9条の会」を中心に世論は9条改憲に反対する声が強まっていることから、改憲はそれほど容易ではないといいます。
最後に加茂教授は、ネオコンへの批判がアメリカ国内でも強まっていることや、カントの『永遠平和のために』を引いて、オルタナティヴの追求の可能性を示唆します。これは、前回紹介した浦部教授の論文とも共通する視点だと思います。
改憲の理由として、「自分たちの手で憲法をつくる」とか、「普通の国になるため」あるいは「国際貢献のため」といったことがよく言われます。しかし、そういった改憲論の背景には、加茂教授が分析するように、世界規模で展開する資本主義に対応するため、つまり、経済的強者のための改憲という側面があることを忘れてはいけないと思います。

【論文情報】法学館憲法研究所編『日本国憲法の多角的検証』(日本評論社、2006年)所収

 

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