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論文「日本における立憲主義の状態」

T・O

当研究所の主席客員研究員である浦部法穂教授の論文です。
この論文において、浦部教授は、まず、改憲を主張する自民党・民主党の「立憲主義」理解を批判します。自民党・民主党は、憲法を守らねばならない主体として、「国民」を挙げ、さらに、憲法制定主体が「国民の代表」たる自分たち「議員」であると認識している点を指摘します。この点につき、浦部教授は、議員たちは国民代表にすぎず、「国民」そのものではないこと、「代表」は「国民」によって「信託」された「範囲」でのみ権限を行使するにすぎず、憲法がその「範囲」を確定していると指摘します。それゆえ、「国民の代表」が「国民」に代わって憲法を制定することを、「憲法制定権の簒奪」であり「クーデター」であると、厳しく批判します。
こうした「立憲主義」の否定に等しい「改憲」論は、日本の支配権力が戦後一貫してとり続けてきた姿勢に基づいています。特に9条があるにも関わらず、自衛隊を保持し、海外派兵まで行なっている現状がそれを示しています。ところが、これを逆手にとって、民主党などは、「立憲政治を建て直し、法の支配を確立する」ために「改憲」を行なう、と主張しています。こうした主張に対し、浦部教授は、丸山真男氏の「『現実』主義の陥穽」という論文を参照し、批判します。
丸山氏は、「現実」が「既成事実」と等置され、「現実主義たれということは、既成事実に屈服せよ」とされがちである点、本来は多面的である「現実」が一面的に捉えられがちな点、さらに支配者の選択する方向が「現実的」とされ、これに反する選択の方向が「非現実的」とされやすい点を指摘します。浦部教授は、こうした丸山氏の議論が、今の改憲論にも当てはまるといいます。その上で、多面的に「現実」を見ることの必要性を主張し、国際社会の中で、例えば「人間の安全保障」への取りくみが見られるという「現実」などから、「どの『現実』を選び取るのか」と問います。
“憲法とは、国家権力を制限し、もって人権の保障をめざすものである”という「立憲主義」の理解を欠いたままの(あるいは意図的にその理解を否定する)「改憲」論、しかも、その「改憲」論を政府によって作りだされた「現実」が後押しする現状のもとで、「人間の安全保障」のほか、アフガン戦争・イラク戦争に対して数十万もの人が参加した世界各地での反戦デモ、GPPACのような紛争予防への取り組みなど、憲法9条が目指す武力によらない平和という理念を目指す「現実」も世界中で見られる今、浦部教授が問うように、どの「現実」を選び取るのか、どういう「現実」を目指すのか、一人ひとりが真剣に考える必要があるように思います。

【論文情報】法学館憲法研究所編『日本国憲法の多角的検証』(日本評論社、2006年)所収

 

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