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書籍『靖国問題』

小泉首相が在任中靖国神社を参拝するかが大きな関心を集めています。このホームページでも、公式参拝の違憲訴訟について何回かに渡ってとりあげてきました(「首相の靖国参拝と裁判所の役割」(中高生のための憲法教室)・靖国神社公式参拝違憲訴訟(1)(3))。
これまでの首相の談話によると、参拝の目的は概ね@「明治維新以来、家族や国のために命を捧げられた方々全体に対して『追悼』の意を表する」こと、A「今日の日本の平和と繁栄は多くの戦没者の尊い犠牲の上にあることを思い、将来にわたって平和を守り、二度と悲惨な戦争を起こしてはならないとの不戦の誓いを堅持すること」でしょう。
確かに、哀悼の心を持つことは大切なことですし、平和を誓うことにも異論はないでしょう。最近、靖国神社に行ってきましたが、熱心に参拝している若い層も思っていた以上に目につきました。何を祈っているのか、気にかかりました。

問題は、靖国神社とはどういう所かです。高橋哲哉教授が著した『靖国問題』が、多方面から分析してこれに答えています。
教授は、靖国神社の第一の使命は、死者を「追悼」、すなわち、その死を「悼み(=“痛み”)」悲しむことにあるのではなく、国のため、天皇のために死ぬことを賞賛して「神」として祭り、後に続く者の模範とすること、すなわち「顕彰」することにあると著しています。戦争するためには、「何よりも、国のために死ぬ兵士を調達する」ことが必須だからです。靖国神社の中に、「遊就館」という軍事博物館があります。真珠湾で決死の魚雷攻撃で戦士した9名は「九軍神」として大きな写真が展示されているなど、戦士者を「英霊」として讃えています。教授が著書で説明していることを、膨大な具体例で示しています。

中国や韓国は、A級戦犯が合祀されている靖国神社に首相が公然と参拝することに問題を絞り込み、あとは日本自身の問題だとしています。では、A級戦犯を靖国神社から他へ分祀すれば、問題は解決するのでしょうか。教授は、仮に靖国神社がA級戦犯を分祀に応じたとしても、根本的な問題が残るとします。靖国神社の第二の使命である、明治以降の日本の戦争責任、植民地化を正当化するということを不問に付したまま、首相はもちろん天皇の参拝にも道を開くことが可能になるからです。「遊就館」では、毎日6回、ドキュメント映画「私たちは忘れない」を放映しています。映画は、例えば、「日清戦争で日本が勝った結果、朝鮮の独立の道が開けた」「日米開戦はアメリカから強要されたもので、日本にとって自存自衛の戦争だった」など、日本が行ったのは、アジアの人々を解放するための正しい戦争だったと主張しています。
正しい戦争に勝ち、国家=天皇のために散って逝った人たちを讃えよう、ということで、第一と第二の使命は不可分です。靖国神社も、これまでの戦争を「平和のため」と認識しています。現代風に言えば「国際貢献」です(『靖国問題』195ページ)。冒頭で記した「平和を守り…不戦の誓い」を靖国神社で行うことは、靖国神社と同じ史観に立つことを示しています。

教授は、「日本は…戦争や武力行使に備えてきたし、いまや本格的にそれに備えようとしている。」「戦没者を顕彰する儀礼装置を持つ(こともその一つ)」と指摘しています。
政治家は、靖国神社の使命を知り尽くして参拝しています。この書籍は、今この時期に首相をはじめ多くの政治家がその参拝に熱心な本当の理由を気づかせてくれる書籍です。
なお、遊就館の膨大な展示をじっくりご覧になることも、ペリー来航以来の日本が歩んで来た道を巨視的に考えるうえで、大変有益だと思われます。(H・T)

【書籍情報】2005年4月、筑摩書房から発行(ちくま新書)。定価702円+税。

 

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