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愛媛(2)

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愛媛県警裏金問題 ― 民主主義、地方自治の形骸化
東 玲治(仙波さんを支える会世話人)

愛媛県警鉄道警察隊の仙波敏郎巡査部長は、平成17年1月20日、愛媛県警でも長年にわたり、組織的な裏金作りが行われてきたことを記者会見して、告発した。現職警察官が名を名乗り、警察の不正を告発したのは後にも先にも、仙波巡査部長ただ1人である。警察の不正には全ての警察官、職員が好むと好まざるとに関わらず加担し、加担させられているが、仙波巡査部長は不正への加担を拒否し、昇任差別を始め、さまざまの差別を受けながら、「警察官は犯罪を犯してはならない」という信念を貫き、差別に甘んじ、35年の長きにわたって巡査部長という階級に据え置かれてきた。不正に加担していない警察官がいたという事実に驚いた人も多かった。
この告発をオンブズえひめの弁護団が手弁当で支え、高校の同期生を中心に組織した支える会は会員を募って、裁判を支えてきた。幸い、県人事委員会は告発直後の配転は不当として、取り消しの裁決を行い、この配転や告発妨害行為などについて提訴した国家賠償法に基づく損害賠償請求訴訟でも一審で完勝し、9月30日に予定されている控訴審判決でも、勝訴は確実な情勢にある。
これと同時に仙波巡査部長は国費で支弁される手当が裏金にされ、本人に支給されていないとしてその支払い請求を、弁護団と支える会は二つの住民訴訟をそれぞれ起こし、裏金問題の追求を続けてきた。
その過程で痛切に感じたことは、会計検査院も都道府県監査委員も全く機能していないということである。詳細は省くが、匿名で届けられた愛媛県警会計課の内部資料では警察庁と会計検査院の馴れ合いをうかがわせる記述が散見され、検査院は検査をくぐり抜ける知恵を警察に与えているフシさえある。日本の検査院は欧米の検査院と比べ著しく不正や無駄の発見率が低いといわれている。不正や無駄の発見率が50分の1にも満たないという。警察の裏金にまつわる検査などは知る限り行われた形跡すらない。不正を温存させてきたといっても過言にはなるまい。
都道府県監査委員も同じである。
愛媛県では裏金問題をめぐり、何度も監査が行われてきたが、一度も監査が完遂されたことはない。県警は、関係警察官に対する聞き取り調査に上司を同席させたり、会計資料のマスキング(目隠し)をはずそうとしなかった。監査委員が、それをはずすよう求めても、「捜査協力者に直接接触しないという条件が守られない限りマスキングははずせない」という県警の「恫喝」に最後は屈してきた。
十分な監査をしていないにもかかわらず、監査委員は「公金の使途を最終確認するにはいたらなかったが、監査請求人(弁護団や支える会会員)の言う『裏金になった』とまでは言えない」というのが監査委員のいつものいいわけであった。
都道府県と政令都市では監査委員は4人で、内2人は知事など長が選任し、残る2人は議会から選ばれる。議会選任委員は、知事与党から選ばれるのが通例で、つまるところ、知事のメガネにかなった人物が選ばれてしまうことになる。監査請求を経て起こされる住民訴訟の被告は知事や市長であるから、彼らのメガネにかなって選ばれた監査委員が自分を選んだ知事や市長の責任が問われることになりかねない徹底的な監査などは行う道理がない。
公金の使途は『1円』まで、厳格な検査、監査に付されるべきである。しかし、当たり前のそのことが行われないために、警察の捜査費などの「裏金の原資」となる費目は警察の妨害と、検査、監査の不作為の競合によって、誰の目も届かない「ブラック・ホール」と化し、裏金作りという犯罪行為は、次々と時効の闇に葬られてきた。民主主義や地方自治は形骸化して、全く機能していないのではないかと思う。
(愛媛県警裏金問題の詳細については、仙波敏郎さんを支える会ホームページに連載したドキュメントを本にした『ドキュメント 仙波敏郎―告発警官1000日の記録―』(東玲治著 創風社出版 税込み1890円 お申込みはこちらへ)をご覧ください。)