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映画「戦後在日五〇年史『在日』」英題:The Story of Koreans in Postwar Japan


花崎 哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           


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 映画『在日』は1995年戦後(解放)50年の年に、主に在日朝鮮人の人々によって制作された記録映画です。「在日」朝鮮人の視点から捉えられた「日本という国」の戦後史であって、そこには「日本人」の側からまったく知らないですましている「在日朝鮮人」への差別と人権無視の現実があることに気づかされます。そしてそれはこの「日本という国」が、「近隣諸国への侵略戦争によって何をやってきたのか」を全く反省しておらず、責任感を持たず、それゆえ戦後も一貫して人を人とも思わないような差別の政策を続けてきて、いまに至ることを教えてくれるものです。

 映画『在日』は二部構成で作られています。歴史編と人物編です。
 歴史編は、映像と証言で綴る解放50年の在日同胞の苦難の歩みです。戦後の冷戦構造と南北分断国家という祖国によって翻弄される在日像と戦後の朝鮮人運動と日本の「超国家主義」をあぶりだして戦後史の欺瞞性をえぐります。
 人物編は、在日を象徴する人間編ドキュメントです。戦後の闇市、パチンコの景品買いに生きる一世の女性。先祖の地韓国と、生まれ育った秋田県田沢湖町の、二つの故郷を愛する二世の河正雄。在日ブルース、「清河への道」を歌う二世の新井英一。そして三世のテレビカメラマン、陸上競技選手、名作「にあんちゃん」の作者の娘らが、それぞれの半ば日本人になりながらの居場所を捜していきます。(http://www.inori-ha.com/katudou5.htm)
 歴史は俯瞰の視点からと、その時代を生きた民衆のさまざまな具体的な姿から見つめ、検証する視点の双方か?あって、はじめてその実相に迫ることか?出来るものだと思います。この映画は「歴史編」「人物編」の両面から立体的に捉え、歴史的事実とその中で生きた人々の思いがわかる、感じられる優れた構成になっています。

 印象に強く残ったのは、敗戦直後からの在日朝鮮人に対する日本政府の態度です。
 敗戦から日本国憲法の公布、分断国家の「独立」、朝鮮戦争、サンフランシスコ条約の締結に至る戦後の6年間の間に、日本国政府が在日朝鮮人に対して画策したのは、自分たちが犯した収奪と侵略戦争に対する反省がないばかりか、責任逃れとも言える醜いものです。そうして在日朝鮮人は日本国憲法の外に置かれ、国籍や参政権を剥奪されていったのです。
 例えば、日本国憲法からの排除。少し長くなりますが、映画の中のナレーションと憲法学者、古関彰一さんのお話から引用します。

ナレーション「つまりマッカーサー草案の第13条には『国籍によって差別されない』ことを謳い、さらに16条には外国人の法のもとの平等を、明確に謳っていたのである。しかし日本側は GHQ との数回にわたるやり取りの中で、全ての自然人を、すべての『国民』に、国籍を『門地』という語に変え、外国人を排除した日本国憲法第14条の法の下の平等を誕生させたのである。」
古関彰一さん「(日本国憲法が)国民の前に出てきた時には、外国人に関する規定どこにもない。その後はご存知のように1947年昭和22年の5月3日に日本国憲法が施行されますが、その前日に天皇の出した『外国人登録令』によって外国人とみなすという『みなす』規定になっているわけです。つまり日本国憲法ができたということは、言い方を変えれば日本国民が人権と平和を獲得したというその憲法ができる前日に在日の人たちは人権を剥奪されたっていうことですね。
 だけどもうひとつあるんです。1945年の12月に、それまでの衆議院議員法が改正されて初めて日本の婦人は参政権を付与された。画期的なことですよね、日本の歴史の中で。だけどその直前に『戸籍法の適用を受けざるものは参政権を有しない』という規定を作ってるわけです。だから日本の婦人達が初めて参政権を適用された画期的な衆議院議員法が改正される直前に、在日の人たちは選挙権を失ったわけです。これはすごいことだと思いますよ。やはり私たちはそういう風に戦後を、僕自身も見てこなかった、やはりそういう文脈の中でもういっぺん見直す必要があるだろうと思いますよね。」

 そしてそうした政治と社会両面での在日朝鮮人に対する差別、偏見は、今も在日朝鮮人や近隣諸国に対して厳然とあって、改められないばかりか、ますます露骨なものになっています。
 またそうした中にあって歴史の事実から明らかにし、知らせようとするようとする動きに対して圧力をかけ続けています。慰安婦問題、強制連行の問題、また朝鮮学校無償化除外問題や民族差別ヘイトスピーチなどいま、日本の政治と社会が一体になって、こうした人権を抑圧し、また平和への道を閉ざそうとしていることがわかります。

 私たちは、8月25日、第44回の憲法を考える映画の会、この映画を上映して、「在日」について歴史を知り、一緒に考える場を作ろうと思っています。8月15日の敗戦の日、朝鮮の人々にとっては光復節と朝鮮人虐殺のあった9月1日の間に開かれる上映会として、この作品を選び、改めて「在日」について考えて行きたいと思い、紹介させていただきました。

註:在日朝鮮人の方の呼称については、映画の中で使われている『在日』『在日朝鮮人』の呼称を使わせていただいています。

【制作スタッフ】
製作:映画「戦後在日五十年史」製作委員会
監督:呉徳洙 助監督:金聖雄 
撮影:本田茂・石倉隆二・篠田昇
録音:本田孜 音楽:野沢美香 
ナレーター:原田芳雄        
1997年制作/日本映画/ドキュメンタリー/歴史編135分・人物編123分

【上映会のお知らせ】
第44回 憲法を考える映画の会
日時:2018年8月25日(土)
13:30〜16:00 [在日]歴史編(135分)
16:10〜16:40 トークシェア(映画を見ての感想の出し合い)
17:00〜19:05 [在日]人物編(123分)
会場:文京区民センター3A会議室(地下鉄春日駅・後楽園駅)
詳しくは憲法を考える映画の会ホームページ『在日』



 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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