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映画『夜間もやってる保育園』


花崎 哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           

 子どもの笑顔や表情が映し出される映画って、どうしてこう切ないんだろう。笑っていても、喜んで遊んでいても切ない。
 幼い頃育った保育園を久しぶりに訪ねたちょっと大きくなった女の子が保育園の中の貼り紙をあちらからこちらへと読み歩く場面があります。幼い頃は読めなかったけど「こんなことが書いてあったんだ」彼女の頭の中をめぐっている幼かった頃の懐かしさが目に見えるようで、そんなところにも何だか切ない気持ちがこみあげてきます。
 きっとこの切なさは、映画を見ていて心が動いているという実感なのでしょう。子ども達の表情や何気ないしぐさに自分が子どもだった頃の感じ方を思い出して、また、子育てをしていた頃のそれなりに一生懸命だった自分たちのことを思い出してきっと心がうずくのだろうとわかりました。

新宿歌舞伎町に隣接する大久保で24時間保育を行う「エイビイシイ保育園」では、完全オーガニックの給食による食育や多動的な子どもたちへの療育プログラム、卒園後の学童保育など、独自の試行錯誤をつづけていました。さらに北海道、新潟、沖縄の保育現場を取材しました。

さまざまな事情で子どもを預ける親や保育士たちの葛藤やよろこび。すくすくと育つ子どもたちの笑顔や寝顔や泣き顔…。知られざる夜間保育の現場から、家族のありかた、働きかた、いま私たちが暮らしているこの社会のかたちを照らします。(映画『夜間もやってる保育園』公式サイト「作品解説」より)

 はじめ、この映画は子ども達の笑顔や泣き顔がたくさん出てくる保育園の中の世界の映画かと思っていましたが、ここで描かれているのはおかあさんであり、おとうさんであり、保育士さんであり、園長先生であり、それを支え一緒に力になろうとしている人たちです。
 「何でも話して吐き出して」この保育園は子どもの、というよりお母さんの心配、悩みに答える保育園です。
 それぞれに悩み、ぶつかり、考え、自分たちの今やっていること、やろうとしていることをつかもうと懸命になっています、映画の中でもきっとゴールに行き着くことはないのでしょう。すべて、つねに現在進行形です。子育てって、そういうことなんだな、という気持ちがいつの間にかわいてきます。

 素晴らしい実践をやっている夜間保育園の紹介というのではありません。こういう保育園が身近にあったらいいなあ、とうらやましがらせる特別な保育園を描いた映画でもないでしょう。確かに「いいなあ」「いいなあ」と思ってしまうけれども。

 夜間も親と一緒にいられない乳児、幼児。それでも待機児童がたくさんいて働けない親たちがたくさんいること、こんな実態、可哀想でしょ、ひどいでしょ、という問題提起の語り方では監督は捉えていません。「何が悪いのだ」と怒りがこみ上げてくるような映画でもありません。映画紹介のパンフレットの中で監督はこんな風に言っています。「対立の構図をつくると、映画自体が『怒って』しまうでしょう。映画が怒ると足元が見えなくなってしまう。足元のことに怒っていたはずが、いつの間にか話が大きくなってしまう感じかな。ほんとうは足元を見つめた方がいろいろなことが見えるのです。」
 そうした視点、こだわり、映画の作り方がこの映画の全体に息づいている映画だと思いました。

 ではこうした子どもをめぐる現実の情況をどう見るのか、映画の作り手はそれぞれの親たちの職場を訪ね、丹念に話を聞いて歩きます。はじめからこうあるべきだと何かを想定して話を聞くのではなく、率直に、素直に聞いたことを、映画を見る人の前に投げかけていきます。
 「僕自身が撮影を通して勉強しながら『入門編』になるようなものをつくろうと思ったんです。お客さんにまずは世の中に夜間保育園があるということを知ってもらおう。」
 先ず知って、一緒に考えていこう、そうした映画なのでしょう。

 「困ったときに何でも言ってください、力になる保育園です」。エイビイシイ保育園園長の片野さんが言います。声高にではなく、むしろつぶやくようにそう話します。こうした言葉がさりげなく出てくるところが、この保育園の本質をつくっています、きっと。
 保育士の仕事が身についた頃の若い保育士が語ります。「子どもと保育士も人間関係。うまくいったり、うまくいかなかったりで、そうした人間関係が楽しい」。ここでの保育士達の子どもへの向き合い方が感じられます。

 「子どもを育てるということに対し、みんなが敬意を払えるような社会」、ホントのそうした社会をつくりたいと素直の思える映画です。映画が終わって明るくなった会場を見回すと、朝からの上映にかかわらずいろいろな世代の人たちが詰めかけていて、それぞれに満ち足りた表情をしているのがわかりました。保育士をめざしているのかな、と思わせる学生さん達の姿もあって、そうした人たちとこの映画を満喫できたことがちょっとうれしかったです。

【スタッフ】

企画:片野清美
製作・監督:大宮浩一
監督補:田中 圭
撮影:遠山慎二
撮影:前田大和
編集:辻井 潔
音響デザイン:石垣 哲
2017年制作/111分・日本映画(ドキュメンタリー)

【公式サイト】http://yakanhoiku-movie.com/

【予告編】https://www.youtube.com/watch?time_continue=12&v=ibAN3WqYaro

【上映案内】9月30日~ ポレポレ東中野(ロングラン:12月23日以降も上映継続)
      11月18日~ 横浜シネマ・ジャック&ベティ
      全国版はhttp://yakanhoiku-movie.com/theaters.phpをご覧ください。
                           

【問合せ】
 憲法を考える映画の会 hanasaki33@me.com


 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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