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映画『エルネスト もう一人のゲバラ』(英語題名「ERNESTO」)


花崎 哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           

 今年8月に恵比寿で、チェ・ゲバラ没後50年「写真家チェ・ゲバラが見た世界」が開かれていました。その案内チラシの中に、彼が広島を訪ねたときに撮った写真がありました。チェ・ゲバラは写真家でもあったのか、彼が広島に来ていたのかと意外に思い、少しこころ惹かれました。
 この映画は、ゲバラが経済使節団として訪日した際、自分から望んで、広島の爆心地を訪ねるところから始まります。原爆資料館の展示を見てから言います。「君たちはアメリカにこんなひどい目に遭わされてどうして怒らないんだ」
 「怒り」についての彼のセリフが、劇中にもう一つあります。主人公のフレディ(エルネスト)が学ぶ医学校を訪ねたチェ・ゲバラを追いかけてフレディは尋ねます。「あなたのその絶対的自信はどこから来るのですか?」それに答えてゲバラは言います。「自信ではない。怒っているんだ」そして付け加えます。「それは憎しみではない」

【ストーリー】
 医者になることをめざして革命間もないキューバに留学した日系ボリビア人フレディ前村ウルタードは、キューバ危機に遭遇し、また医学校でチェ・ゲバラやカストロに接する中で、自分にやるべきことは何か考え、悩み、自国ボリビアが軍事政権によって弾圧がすすみ、人々の生命と人権が蹂躙されているボリビアの民衆を解放するためにチェ・ゲバラのゲリラ革命軍に身を投じていく。

 革命家のいわばアイコンのようになっているチェ・ゲバラの有名な写真が、軍服姿だったからでしょうか、私のイメージの奥に、その革命家としての人間性の豊かさについての話を聞いてあこがれはあっても、ゲリラ戦、「革命」を指揮した危険な人という意識がつきまとっていました。 (学生運動を過激派と決めつけ、革命を「危険」なものと刷り込ませた当局の宣伝に意識をつくられていたからかもしれませんが)
 しかし、この映画はゲバラにしろ、フレディにしろ、革命家のもっている切ないまでのその内面のやわらかさを見る者に感じさせることに成功しています。
 フレディとゲバラ、抑圧を加えるものに怒り、世の中をよりよいものに変えようとして若くして死んでいった革命家、その理想家でありおそらく夢想家でもあるたたずまいは、静かでしかし確かなものでした。
 ふと、2015年の国会前での集会でよく聞かれた「孤独に思考し、判断し、行動する」と言ったことばが頭をよぎりました。青年らしいまっすぐな悩み、若い理想と妄想を内に秘めたドンキホーテ、それがチェ・ゲバラとフレディに共通するものであり、ゲバラからフレディが受け取ったもの、ということが伝わってきました。

 おそらくゲバラ語録にでもあるのでしょう。思わず書き留めたくなる共感できる名セリフがこの映画のあちこちにあります。「(何をすれば良いか)やるべきことなんて人に聞くな。神様にだってわからない。やるべきことは君の心が教えてくれる」
 そしてその言葉の通り、自分の心にしたがって、医師の道をめざしていたフレディは、祖国ボリビアが軍事政権になり民衆への弾圧がくり返されていることを知ったときに、チェ・ゲバラの率いるゲリラの戦士へと身を投じるのです。
 何が彼らを動かしているのか、遠く忘れていた青年の一途さをその静かさの中に感じとれる映画です。
 
 広島の原爆碑に黙祷するゲバラ、言葉少ないセリフと振る舞いの中に、彼のその柔らかな内面に受けた衝撃を感じました。
 おそらく原爆病院で。「キューバから来ました。あなたと共にいます。」被曝者の女性にゲバラはそう声をかけます。女性が「ありがとう」と言ったところに、言葉が通じなくても気持ちが伝わったことがわかります。内面にあるものを描く優れた表現と思いました。

【スタッフ】
監督・脚本:阪本順治
原案:マリー・前村・ウルタード エクトル・ソラーレル・前村
製作総指揮:木下直哉
プロデューサー:椎井友紀子 アルマンド・アリベラ・ノダルセ
撮影:儀間眞悟
照明:宗賢次郎
録音:照井康政
美術:原田満生
衣装:岩崎文雄
メイク:近藤美香
編集:普嶋信一
音楽:安川午朗
音楽プロデューサー:津島玄一
監督補:ロランド・ハビエル・アルミランテ・カスティーヨ
スクリプター:近藤万智子
助監督:小野寺昭洋
製作担当:松田憲一良
配給:キノフィルム

【キャスト】
オダギリジョー(フレディ前村ウルタード=エルネスト・メディコ)
永山絢斗(森記者)
ホワン・ミゲル・バレロ・アコスタ (チェ・ゲバラ)
ロベルト・エスピノーザ・セバスコ(フィデル・カストロ)
ルイス・マヌエル・アルバレス・チャルチャバル(グスタボ)
アルマンド・ミゲール(ホセ)
ヤスマニ・ラザロ(アレハンドロ)
ダニエル・ロメーロ・ピルダイン(ハシント)
ジゼル・ロミンチャル(ルイサ)
アレクシス・ディアス・デ・ビジェガス(ホアキン)
ミリアム・アルメダ・ビレラ(タニア)
エンリケ・ブエノ・ロドリゲス(ベラスコ)

2017年・日本/キューバ合作映画・124分

公式サイト:http://www.ernesto.jp/
予告編:https://www.youtube.com/watch?time_continue=1&v=BFJ8HGRD5xI
上映情報:TOHOシネマズ新宿・TOHOシネマズ日本橋・有楽町スバル座ほか全国ロードショー
http://fb2wp.net/ernesto/theaters/


 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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