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映画『クワイ河に虹をかけた男』(2)


花崎 哲さん(憲法を考える映画の会)
                                                           

今週もまた、先週につづいて映画『クワイ側に虹をかけた男』を見て考えたことを書かせていただきます。

この映画の中で、私がいちばん印象に残っているのは、1991年、永瀬隆さんが元捕虜のイギリス人兵士の奥さん、パトリシア・ロマックスさんから手紙を受け取るところです。「文面を追ううちに永瀬さんの顔からみるみる血の気が引いてきました」
それまで永瀬さんは、1964年以来毎年のようにタイを訪れ、たとえば看護師になろうとしている学生への奨学金制度を作るなど当地の人たちへの贖罪の気持ちを込めた取り組みを続けてきました。通訳として自分が関わった捕虜への虐待や拷問を伴う取り調べなどに対して、自分の償いとしてできる限りのことをしてきたという思いがあったのだと思います。
しかし手紙の中でパトリシアさんは書いています。
「本の中であなたは『自分は許された』と書いておられますが、どうしてそう思ったのでしょうか。私の夫はあなたを許しているでしょうか。私はそうは思いません」
そうして永瀬さんはパトリシアさんの夫、エリック・ロマックスさんと文通を始め、クワイ河のたもとで再会し、エリックさんは日本に来て、そうした交際を重ね永瀬さんを許す決心をするのです。

戦争の傷は人の心の中に残り続けて決して癒えないものであること、加害者は忘れても被害者は忘れることもできないこと、まして戦争でされたことを許すなど加害者が考えているようにはできないことを、この話からあらためて思いました。

映画の中にも今や観光地化している泰緬鉄道工事の難所ヘルファイアー(地獄の業火)峠などで永瀬さんたちが日本人であることを知って、文字通り刺すような目で見る人たちがいます。そうした人の表情を映画はきちんととらえています。つまり子孫に至るまで日本軍のやった行為は日本人の行為として許されていないのです。それを日本人だけが知らないでいるということです。

映画の中にまた、この捕虜収容所の副所長をしていた人を父にもつ駒井修さんを永瀬さんが訪ねるところがあります。副所長駒井大尉は、この捕虜収容所の捕虜虐待の罪で戦後BC級戦犯としてシンガポールで処刑されました。駒井修さんは父親を処刑されたことに対してずっと恨みのような気持ちでいました。しかしその相手にも同じような「俺のオヤジ、日本人に殺された」という気持ちでいる人がいると考えるようになりました。そうして永瀬さんの取り計らいでイギリスのロマックスさんを訪ね謝罪し、長いこと心につかえていたものを取ることができました。
永瀬さんは「自分の痛みがないと他人の痛みがわからない」という言葉でまとめています。
あるいは個人的に、こうした和解を得ることによって、許し合うことを通してお互いに敬意を持ち合う友情が作れたのかもしれません。
国と国とではどうなのでしょうか。

数の問題ではありませんが中国の人たちはどう思っているのでしょうか。韓国や台湾、マレー半島ではどうなのでしょうか。北朝鮮の人々は日本人の犯したことを今もどう思っているのでしょうか。日本軍がやったこと、犯したこと、日本という国家の犯罪を被害者たちやその子孫は許しているのでしょうか。それは私たちが考え続けなければならないことと思います。この映画はそうしたいろいろな日本人の責任について考えさせてくれます。

【スタッフ】
監督 満田康弘
語り:森田恵子
音楽:三好麻友
CG:森有香
編集:吉永順平
MA:木村信博
撮影:山田寛 永澤英人
配給:きろくびと
製作・著作:KBS瀬戸内海放送
2016年/日本映画/119分

オフィシャルサイト

 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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