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映画「祝の島」


                              
H・T

 「ほうりの島」と読む、ドキュメンタリー映画です。この島は、山口県上関町の瀬戸内海に浮かぶ人口500人の小さな離島です。古代から海上交通の要衝で、航海安全と豊かな海への感謝を奉げる神官・祝(ほうり)がいたことに由来します。海の幸には恵まれていますが、平地がほとんどなく岩山の多いこの島で、人々は長い年月をかけて棚田を作りひさしを寄せ合う集落と自給自足に近い経済を形成させて濃密で豊かな人間関係の中で暮らして来ました。

 しかし、離島も「現代」を免れません。一つは、1982年に舞い込んだ中国電力による原発の建設です。もう一つは、僻地共通の過疎化です。かつては3000人以上だった人口も、若者が去り、今では高齢化の例に漏れません。後者は映画では意識的な主題からは外されているようですが、隠すことなく、ありのままを描いています。

 人間が悠久の歴史の中で生命をつなぎ、生活を続けて来ることができたのは、偶然にも海や山という豊かな自然に恵まれてきたからでした。「開かれた大自然」と人間の生命は一体です。

 他方、現代の人間は、自然の原理を原子の中まで解明し核を分裂させ、あるいは融合させることも可能にし、それを究極の武器やエネルギーに変えました。「自然」を克服し言わば「閉じ込められた自然」を手にしました。それを基に、電化された都会に人々は集まり、それを核兵器で守りました。

 この映画は、人間が築いてきた自然と共生し人間関係も濃密だった古代から続いた文化と、その対極にある原子力の時代を対比し、これからの文化や豊かさのあり方を問うた力作だと思います。

 祝島と言えば、知る人ぞ知る、原発反対運動が活発な所です。デモだけでも1,050回続けています。映画は、28年間も原発建設作業を阻止してきた、生命をかけた激しい住民の闘いを映し出しています。しかし、この運動は映画の前面には位置づけられていません。この作品が初めてだという若い監督は、上映前の挨拶で言いました。「人々が何に反対しているかではなく、何を大切にしているかを知りたかった。島での暮らしを続けていくこと、それが即ち原発反対であると思った」。確かに、主題は、豊かな海での人々の1本釣り漁、匂いも伝わってくるような棚田の稲刈り、緑を食む豚をわが子のようになでる農民、たった1人の小学校の入学式のために礼服で続々と集まってきて涙を浮かべて祝う大人たち……島での日常の暮らしです。そんな生活の一部に原発の問題は完全に溶け込んでいます。

 原発は、どこも僻地に建設されています。それ故、電力の恩恵を受ける多数の国民からは反対運動はどこか他人事のようです。沖縄に基地が集中されていることと同じ構図を感じます。今までどおりの豊かな自然の中での生活を心から希望し、事故が起きれば生命の危険に直撃される恐怖感におののく住民たちの気持ちを想像することの大切さが伝わってきます。この問題は決して現住している住民だけの問題ではありません。住民たちは口々に「この豊かな自然を子孫に遺したい」との思いを語っています。さらに、人間と自然はどう向き合うか、限界は考えなくていいのか、人間にとって大切なことは何か、という原発を越える大きなテーマも投げかけているように思います。キャッチコピーは「1000年先にいのちはつづく」です。

【映画情報】
製作:2010年 日本
監督:纐纈(はなぶさ)あや
製作総指揮:本橋成一
時間:105分
出演:祝島の方々
上映館:東京 ポレポレ東中野等で公開中 全国順次公開
公式サイト
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