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映画「BOX 袴田事件 命とは」


                              
H・T

 「袴田事件」のことはご存知の方も多いでしょう。1966年6月に静岡県清水市で味噌工場を経営する専務一家(父、母、次女、長男)が惨殺され、放火されたという殺人、現住建造物等放火の事件です。同工場に住み込みで働いていた元プロボクサー袴田巌さん(当時29歳)が犯人だとして、1980年に最高裁で死刑が確定しました。袴田さんは法廷では一貫して無罪を主張し、現在第2次再審請求中です。
 この事件は冤罪ではないかと大きな問題になり、本件の弁護人を務める秋山賢三元裁判官も2002年に書いた著書「裁判官はなぜ誤るのか」の中で、証拠の評価という観点を中心に、根本的な疑問を投げかけています。
 2007年には、この事件の第1審を主任裁判官として担当した熊本典道氏が、自分は無罪だと強く主張したが、2対1で有罪と判断され、主任としてやむを得ず死刑判決を書いた、と告白しました。裁判の評議の秘密遵守義務をあえて破っての発言で、この事件はさらに注目を浴びました。

 映画は、セミドキュメンタリータッチで、袴田さんと熊本さんの2人が主人公です。脚本を書くため約1年間調査した夏井辰徳さんと高橋監督も冤罪であると確信した立場から制作しています。

 第1審で有罪とされた証拠は、起訴してから356日後に味噌樽の中から発見された犯行時の血痕が付いたとされる着衣5点等と自白した1通の検事調書でした。しかし、着衣5点は事件直後に味噌樽を捜索した際には発見されず、その後味噌の仕込みや翌年味噌を移し替えたときにも見つからなかったという不自然さや、着衣に付着した血痕も合理的な説明がつかないものでした。また、意識がもうろうとする激しい拷問を伴う1日平均12時間を越える連日の取調べがあり、自白の強要が強く推定されました。一方弁護人と面会できたのは合計37分でした。

 無罪の心証を得ながら合議に従って死刑判決を書いた熊本さんは、判決に異例の「付言」を付けて、捜査活動は憲法31条の「適性手続の保障」の見地からも厳しく批判されるべきだと指摘しました。自白調書45通のうち、上記の1通を除いた44通の証拠能力を否定しました。熊本さんは良心の呵責に悩み翌年裁判官を辞任し、弁護団に対して支援を続けています。

 判決確定の翌年の1981年、袴田さんは再審請求しましたが、27年後の08年に最高裁で却下になりました。現在74歳の袴田さんは、長期の拘禁と死刑執行の恐怖等によって強い精神異常を来たし家族とも合おうとしません。アムネスティ・インターナショナルの調査によれば、袴田さんは、世界で最も長く拘束されている死刑囚です。

 無実の人が自白に追い込まれる過程や熊本さんの想像を絶する苦悩の描写は迫真に迫ります。「裁判官はなぜ誤るのか」―その回答はこの映画や上記の秋山弁護士の著書でご覧ください。裁判員裁判だったとしたらどんな判決になっただろうかを考えるのにも好個の映画です。

【映画情報】
製作:2010年 日本
監督:高橋伴明
時間:117分
出演:萩原聖人/新井浩文/ 石橋凌/葉月里緒奈/村野武範/ダンカン/中村優子/雛形あきこ/大杉漣/吉村実子/岸部一徳/塩見三省
上映館:東京・渋谷ユーロスペース等で公開中
公式サイト

 
                              

 

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