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映画「インビクタス/負けざる者たち」


                              
K・T

 1995年南アフリカでのラグビー・ワールドカップを控えて、地元南ア代表チーム“スプリングボクス”の戦績は、惨憺たるものでした。ラグビーは、白人のスポーツ。黒人にとってはアパルトヘイトの象徴であり、試合ともなれば必ず“スプリングボクス”の対戦相手を応援する。90年2月11日にネルソン・マンデラ氏が釈放され、94年マンデラ政権誕生後も、アパルトヘイトの傷痕は国を蝕んでいました。不況、失業、犯罪の増加、そして人種間に横たわる越え難い溝、報復を怖れる白人たち。

 山積する問題に果敢にとりくむマンデラ大統領がまっ先に着手したのは、黒人で占められていた大統領警護班に白人を追加配属すること。「まず、ここから」。そして弱体化した代表チームの試合を観戦した大統領は、チームのキャプテン、フランソワ・ピナールをお茶に招き、語り合います。27年に及ぶ投獄中に自らを支えた、ある詩について。大統領の心の底にあるものを理解し始めたピナールは、チームをまとめあげ猛練習で強化に挑みます。「俺たちも変わろう」。
 いよいよワールドカップ開幕。“スプリングボクス”は大方の予想を裏切り、決勝へと駒を進めます。決勝戦の対戦相手は、世界最強と目されるニュージーランド代表“オールブラックス”。マンデラ大統領が自ら体現してきた“卑劣な報復ではなく、赦すことが国を救う”という信念は、白人・黒人たちの間に静かに広まっていました。南ア国民4300万人が心一つにしてスタジアムを見守る中、“奇跡”が始まろうとしていました……。

 実話にもとづくノンフィクション映画です。メガホンを握ったのは、クリント・イーストウッド監督。彼ならではの、人間味ある視線が画面いたるところに散りばめられています。常に精力的で、確固たる姿勢を崩さぬマンデラ大統領が、娘と気持ちがすれ違ってしまうシーンで見せる、一瞬の覚束なげな、心許ない表情。印象に残ります。

 本作では、“国旗・国歌”の問題にも触れられています。南ア“国歌”は、アパルトヘイト時代の曲と黒人解放運動下で歌われた曲、両曲をひとつに編曲したもの。白人主体のチームである“スプリングボクス”のメンバーは、最初歌うことを嫌がりましたが、“オールブラックス”戦の開始前には、肌の色にかかわりなくスタジアムを埋め尽くす観衆とともに、全員が胸に手を当てて大声で歌います。“ONE TEAM ONE COUNTRY”。国を誇りに思い、人種の違いを乗り越え心を一つにして国をまとめあげる。マンデラ大統領の描いた「虹の国」の理想の表れでもありました。
 翻って日本ではどうでしょうか。今の「日の丸・君が代」にまつわる「歴史的な負の遺産』」(浦部法穂の憲法時評「オリンピックと国旗・国歌」参照)から目を背けてそれを“誇り”、“心を一つにして”まとめあげられる国の向かう先が“戦争のできる国”づくりであるというなら、私たちは勇気をもってノーというほかありません。


【映画情報】
製作:2009年 アメリカ
監督:クリント・イーストウッド
原作:ジョン・カーリン
時間:134分
出演:モーガン・フリーマン(ネルソン・マンデラ役)/マット・デイモン(フランソワ・ピナール役) 他
上映館:丸の内ピカデリー他 全国で公開中
公式サイト

 
                              

 

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