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映画「アンダンテ〜稲の旋律〜」


                              
K・T

 対人恐怖症で仕事に就けず引きこもり生活を続けていたヒロイン藪崎千華、悩みながらも自然農業にとりくむ広瀬晋平。異なる世界に暮らしていた2人が出会い、農作業を通して交流が始まります。――対人恐怖症・“引きこもり”の状態とそこから何とか踏み出そうとする千華の役を、映画初出演・初主演の新妻聖子さんが好演。脇を固める役者陣の味わい深い演技も見どころの映画です。

 千華の母は叶えられなかった自らの望みを娘に託し、音楽の道を歩ませようとしてきましたが、千華はその重さに耐え切れません。教職につく千華の父は、挫折した千華を責め、「誰のせいでこんなことになったのだ」と母をも責めます。千華にとって、ありのままの自分を認め受け入れてくれた初めての人が晋平であり、また晋平をとりまく家族と農業仲間の人たちでした。

 「個人として尊重される」(憲法13条)と謳われていても、今の日本社会では“効率的か否か”“役に立つか否か”が人間の価値を計る尺度となっているのが現状です。最も“非効率”とされる自然農業の営みの中で、人間が人間をとりもどす、人間らしく成長していくというこの物語は、その意味でとても象徴的です。
 この映画の登場人物に、“強い人”は一人もいません。今でこそ喜びと誇りをもって自然農業にとりくむ晋平も、少し前までは“非効率で見通しの立たない”農業従事者である自分を卑下していました(そのために恋人に去られます)。横暴そのものにみえる千華の父ですら、実は“貧困”に陥ることを極度に怖れていたのではないかとうかがわせます。零細農家に生まれ育ち、触りたくても触れなかったピアノへの憧れを抱き続けた千華の母に、結婚後すぐにピアノを買い与えたのは、父でした。高度経済成長期に、人々が必死になって掴もうとしていたのは何だったのか、考えさせられるエピソードです。

 この映画では、食と農の現在と将来が、もう一つの大きなテーマとなっています。日本の食料自給率が41%に過ぎないことを警告するのみならず、世界的な視野で、バイオ燃料がもたらしている飢餓や環境問題についても鋭く告発しています。千華の母にとっては、農家の辛い草取り作業から解放してくれる恩寵のように思われた除草剤が、様々な弊害を生み出してきたこともさりげなく描かれます。「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利」(憲法前文)は、いまなお十全に保障されているとは言い難く、私たちが追い求めかちとるべき権利であることに気づかされます。

【映画情報】
製作:2009「アンダンテ〜稲の旋律〜」製作委員会/ゴーゴービジュアル企画/(株)ブルボン/(株)ヴェルジェ
監督:金田敬
原作:旭爪あかね   脚本:山田耕太
時間:108分
出演:新妻聖子/筧利夫/秋本奈緒美/松方弘樹  他
上映館:ポレポレ東中野

※「食」と「農」に関しては、当サイト下記もご参照ください。
◆今週の一言「『食』なくして平和なし」(八木直樹さん(有機農業))
◆今週の一言「食糧危機が問いかけるもの―世界の食糧危機と日本―」(大野和興さん(農業ジャーナリスト))
◆書籍『食大乱の時代―“貧しさ”の連鎖の中の食―』

 
                              

 

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