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映画「ずっとあなたを愛している」


                              
H・T

 タイトルは月並みですが、「愛し続けることの苦悩」と「ずっと愛し続けることだけが人を救う力を持っていること」を深く考えさせられます。人の生と死、孤独、家族、希望という切実な問題、さらには犯罪や刑罰の問題にまで迫る、とても射程距離の長い作品です。

 無化粧のやつれたひとりの中年の女性が人気のない空港のベンチでうつろな目をして煙草をくゆらせているシーンから始まります。15年の刑期を終えて出所したばかりのジュリエット・フォンテーヌ。身元引受人である、歳の離れた妹のレアーを待っていたのでした。

 多くを語らず、孤独の殻に閉じこもるジュリエット。彼女は、裁判でも、刑務所でもそうでした。「刑務所に入ったのは本望よ。死に釈明はない。一生逃れられない」。彼女はどんな罪を犯したのか、なぜ寡黙なのか。謎はドラマの最後にならないと明らかになりません。医師だった彼女は6歳の息子ピエールを安楽死させたのでした。彼女は加害者であると同時に最愛の息子を失った被害者という二重の苦悩を背負っていました。犯行と同時に夫からは離婚され、両親からも無視されたまま。全容を妹レアーに明かす最後のシーンは、動物的なうめき声であり絶叫そのものです。

 息子を殺めてしまった彼女は、自分の存在も失いました。「刑務所は私のいない世界。いなくても問題ない。」レアーの家庭に身を寄せた後もジュリエットの喪失感は続きます。

 しかし、人間は生きている以上、一人ではいられません。彼女は幼い妹レアーと一緒に過ごした想い出があるので「家族」の元に戻ったのでした。かたくななジュリエットの心を次第に開いたのはレアーの「聖母マリア」を想い浮かべる姉への一途な愛でした。レアーは両親から姉のことは忘れろと言われながらも毎日のように姉のことを綴っていました。一緒に過ごすようになってからも、姉の自己との戦いを共にします。「ずっと愛していたのよ」。

 ジュリエットの孤独感を和らげて行ったのはレアーの家族や知人たちとの出会いもありました。ベトナムからの幼くくったくのない養女2人。ピエールの死と対照的に、子供の成長には惜しみない愛情が不可欠なことも強くアピールされています。隣人の若いイラク人夫婦の赤ん坊の誕生の祝福の場面もあります。国境を超えた「生」が繊細かつ確信的なタッチで展開されます。そして一方における知人の突然の死。ジュリエットの世話をしていた人情溢れる警察官が離婚による空虚感を埋めきれず自殺したのでした。
 ジュリエットの心を開いた知人の一人はある大学教授。以前は刑務所の教官でした。「刑務所で人間に対する見方が変わった。囚人も私と同じだ。紙一重だ。」。

 総ての過去をレアーに話し終わったとき、階下からある男性の呼び声が聞こえます。ジュリエットは応えます。「私、ここにいるわ」。彼女が自己の存在を肯定した瞬間でした。

 でも、エンディング・テーマが流れます。「過ぎ去った過去は取り戻せない。失われた時間は二度と戻らない」。

 「ずっと愛していた」レアーと姉とのアンサンブルを是非観て欲しいという紹介・批評が専らです。筆者にはもう一つの大きな愛もテーマであるように思えました。

 犯罪と刑罰について考える機会として、元裁判官よる下記講演会もお薦めです。お2人には裁判員制度についても語っていただきます。
 ※2月4日の講演会(講師は有満俊昭氏・山田真也氏)

【映画情報】
【製作】2008年 フランス/ドイツ
【原題】IL Y A LONGTEMPS QUE JE T'AIME/I'VE LOVED YOU SO LONG
【時間】117分
【監督・脚本】フィリップ・クローデル
【出演】クリスティン・スコット・トーマス/エルザ・ジルベルスタイン/セルジュ・アザナヴィシウス/ロラン・グレヴィル
【上映館】銀座テアトルシネマ、テアトル梅田他全国で上映中

 
                              

 

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