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記録映画「葦牙―こどもが拓く未来」


                              
H・T


みどり学園の屋上より
  子育てを放棄されたり、虐待で心に深い障害を負った子供たちは、そのままでは普通に成長することができません。これは、そうした子供たちと養護施設の職員たちとの格闘と子供たちの逞しい成長を真摯に描いた画期的なドキュメンタリーです。“虐待には関係ないよ”という人にとっても、家族の愛情の大切さや、人間が自立するとはどういうことか、そして教育の本質とは何かを深く考えさせてくれる奥行きの深い作品です。

 児童虐待は、90年代から社会問題になり、現在でも増加し続けています。07年に児童相談所が対応した虐待相談は4万件に達し、3日に1人が虐待で殺されています。虐待の実数はこれよりもはるかに多く、また、「虐待」とまでは言われなくても、精神的、肉体的な暴力は家庭にあふれていると思われます。

 舞台は、盛岡市にある児童養護施設「みちのくみどり学園」です。映画『いのちの作法―沢内「生命行政」を継ぐ者たち―』にも登場し、人間の尊厳や品格が高らかに謳われていました。1人ひとりの子供の成長の過程を細やかに追い、その続編とも言える作品だと思います。この施設は、1957年に結核児童の療養所として出発し、その後虚弱児や慢性疾患を抱える子供たち、そして80年代には不登校の子供たちを主として受け入れ、今世紀に入ると虐待児というふうに、時代の移り変わりに向き合ってきました。

 親から見捨てられ、虐待に遭った子供たちは、深い喪失感から悲しみと怒りを心に抱え身動きできません。一方で、自分の親には強い愛着を捨て切れません。その自己矛盾に苦しみ、自己表現がうまくできず混乱して暴力にも走りがちです。

 映画で凄いのは、虐待された子供たちが自分たちの言葉で自分たちを語るところです。それは、「子供たちこそ原点である」という、50年前の開設時からの一環した信念に基づく教育にあるのでしょう。「心の傷にはいろいろある。子供の方が苦労している。悲惨な体験をしているから。そこに近づけないのは不安だ」。初老の藤沢園長の謙虚さには心を打たれます。


子どもたちが作ったこけし」

 長い間子供たちと一緒に山の原木から大太鼓を作り叩き続けてきた大工さんは語っています。「みんな、お母さんの宇宙のようなお腹の中で純粋無垢に育ち、生まれてきた。子供たちは、自分の心で太鼓の純粋無垢な鼓動を演奏し、感動し、心と心をつなぎ合わせるのだ。『心鐘』という言葉があるが、何もしなければ鐘はならない」。子供たちは、小学生から毎年、木を彫って自画像のこけしを作ります。中学3年生になると弁論大会で偽りのない自分を厳しく見つめる指導を受けます。「葦牙」(あしかび)は葦の若芽のことです。子供たちは、1対1で向き合う職員に囲まれて、春になると力強く萌え出る葦の新芽のように、自立してゆきます。

 虐待した子供たちの親の相当数は自分たちも虐待されて育ちました。暴力の連鎖です。施設の子供たちは、成長するにつれ、この連鎖は自分たちの世代で止めたいと語ります。親にもできないかと思われる職員たちの愛情と教育、それに友情に育まれて育ちますが、「家族仲良く暮らすこと」こそ子供たちの心の叫びです。卒園してゆく子供たちを待っているのはどんな世間なのでしょう。
 
 映画には、親たちも登場します。一方的な加害者としてでなく、暴力に走る弱さと格闘し、成長した子供たちとともに家庭を再建しようとする親として。

 「今、みどり学園のモットーは『21世紀こそ、こども達の世紀に』です。僕はこの映画を通して、施設の環境や場所などの問題もあるけれど、やっぱり、子ども達の横にどんなオトナがいられるかということが一番大切なんだなと痛切に感じました。みどり学園はグループホーム的な小規模施設が良いと言われる時代に、(大きな施設ながら)しっかりと子どもを育て上げられているのですから」。『いのちの作法』に続く26歳のプロデューサー、都鳥さんからいただいたメールです。
 08年の調査によれば、虐待者の半数が生活保護世帯か住民税の非課税世帯で、虐待につながりそうな家庭の状況は「経済的な困難」がトップでした。そして、どの事例にも共通するのは社会的支援から孤立していることであり、孤立し、子育てに悩む若い親が増えました(朝日新聞09年9月30日付朝刊)。

【映画情報】
【製作】2009年 日本
【時間】113分
【製作総指揮】武重邦夫
【プロデューサー】小林弘典/朱凱莉/都鳥拓也・都鳥伸也
【監督】小池征人
【上映館】川崎市アートセンター等で公開中 全国順次ロードショー
公式サイト 
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