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映画『精神 MENTAL』


                              
H.T.記

 統合失調症、躁鬱病、摂食障害、パニック障害、その他様々な神経症を実際に患っている精神障害者の20名の方々を主人公にした、ドキュメンタリー映画です。タブーとされてきた領域に初めて正面から向き合った「ドキュメンタリーの臨界に近づいている」(平田オリザ)画期的な作品です。精神科患者数は通院を合わせると302万人(2005年)に上ります。国民の40人に1人と決して少なくない数字です。ストレスの多い現在、自分あるいは周囲の人がいつ罹患するかも分らない身近な問題です。

 監督は自ら「観察映画」と称する手法で映画「選挙」を作り、世界的に注目され多くの受賞をした想田和弘氏。「観察映画」の2作目です。早くも、アジア最大規模の釜山国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞を獲得しました。出演者全員の同意を得、その方々を診ている医師にも相談しながら撮影されました。でも患者の10人中8,9人は断ったとのことです。監督は、「顔を隠すことは患者を異質なものとして遠ざけ、差別や偏見を助長することになりかねない」と書いています(6月8日付け日経新聞夕刊)。

 監督は、予定したメッセージを意識して伝えようとするのではなく、患者の複雑怪奇な現状をそのまま提示し、観客には「素」の状態で精神科の世界を観察して欲しいと述べています。虚心坦懐に観ていると、想像を絶する患者の苦悩が伝わってきます。「こんなに苦しいことはない」。「死にたい」。事実、年間3万人余の自殺者の18%が精神の病を患っている方です。苦しみは病気それ自体によるものだけでなく、偏見によって周囲の健常者が遠ざかって行く孤独にあります。健常者の目を恐れて、障害者もカーテンを作ってしまいます。しかし、障害者は気付いています。「健常者だって、完璧な人は世界に誰1人いない。お互いに足りない所を補い合ってやっていけばいいんだ」。そして自らのカーテンを必死で取り払おうとします。生きるためには、「人間」を必要としています。「社会」に出て、自分ができることを一緒にやりたいのです。

 障害者は、カーテンを取り払うことを、「自分の中で自分に対する偏見を取り除く」と表現しています。「自分は他人と違ってダメなんだ」という気持ちを捨て、「自分は自分」(憲法13条の「個人の尊厳」の一つの内容です)だと自己を肯定する強さを障害者から教えられます。
 それ故、これは健常者を含めて、自分自身が強くなる「精神」を描いた普遍性を持った映画だと思います。
 そして、障害者と苦楽を分かち合う医師、スタッフのごく自然に見える暖かな情景からは、誰もが「健康で文化的な生活」(25条1項)、具体化すれば、共感して健康の維持・回復に向けて最善を尽くし合う人間らしい関係が構築された社会こそ、「尊厳ある社会」であり、先進的な文化国家、福祉国家なのだと感じます。「自然に見える暖かな情景」の背後には、強い行動力が感じられます。

【映画情報】
【製作】2008年 日本/アメリカ
【時間】135分
【監督・撮影・編集】想田和弘
【出演】「こらーる岡山」のみなさん他
【上映館】東京・シアター・イメージフォーラム他全国で公開中
公式サイト

 
                              

 

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