法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

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映画「縞模様のパジャマの少年」


                              
K・T

 ホロコーストの時代。ナチス将校を父に持つ8歳のドイツ人少年ブルーノと、強制収容所に送り込まれた同い年のユダヤ人少年シュムエルとの間で人知れず育まれた交流と友情――。名作「ブラス!」などで知られるイギリスの映画監督マーク・ハーマンがメガホンを握った心揺さぶるドラマです。
 父の昇進に伴って、ベルリンから人里はなれた郊外へ引っ越したブルーノ一家。友達もなく退屈しきったブルーノは立ち入ることを禁じられていた裏庭から森へ、そして“農場”へ――。ブルーノが“農場”と思い込んだそこは、ユダヤ人強制収容所キャンプであり、父の新任務とはその強制収容所所長だったのです。高圧電流の流れるフェンス越しにブルーノが出会った“縞模様のパジャマの少年”。
 二人は、二人とも、自分が何故このような境遇にあるのか、解っていません。ブルーノとシュムエルは、分別も偏見も持たず、互いの存在を認め合っていくのです。“何故彼らはパジャマを着ているのか”と問うブルーノに、ブルーノの母が、分別によって“あの人たちは私たちとは違うから”と答えるのとは対極にあります。
 当時の“分別”は、ユダヤ人は劣った民族であり、ドイツの害虫であると教えていました。人は人であるが故に尊いとする“人間の尊厳”の概念や、一人ひとりが異なる存在であることを認め合う“個の尊重”という今の日本国憲法を支える理念が、実にこのホロコーストという人類の痛恨の歴史を経て獲得されてきたものであることを、私たちは想起する必要があるでしょう。
 大人の目を逃れて友情を深め合うブルーノとシュムエルでしたが、ある日ブルーノは、シュムエルを裏切ってしまい――。
 (以下は、映画情報に続いて、本作の結末に触れる部分があります。これから鑑賞しようと思われる方は、映画をご覧になってからお読みください。)

【映画情報】
製作:2008年 イギリス/アメリカ
監督:マーク・ハーマン  原作:ジョン・ボイン
時間:95分
出演:エイサ・バターフィールド、ジャック・スキャンロン、デヴィッド・シューリス 他
上映館:恵比寿ガーデンシネマ 他で公開中
公式サイト 

※ 2008年、当研究所伊藤所長は「憲法の視点でドイツと日本を検証する」という講演を行いました。その講演録を「法学館憲法研究所」創刊号に収載していますのでご案内します。

 ブルーノは、我が身を守るために些細な嘘をつくことでシュムエルを窮地に陥れますが、シュムエルにとってはそれは生死を分かつやも知れぬ“嘘”でした。シュムエルは残虐な体罰を受けますが、再会したブルーノを許します。ブルーノは、お返しにいなくなったシュムエルの父を捜す手伝いをしようと申し出、シュムエルから受けとった“パジャマ”に着替えてフェンスの内側にもぐりこみます。おりしも、収容所内では“囚人のシャワー”が始まっていました。ブルーノもシュムエルも、ガス室の扉の向こうへと追いやられます。事態に気づいてブルーノの名を絶叫する父、慟哭する母、そして姉。映画は幕を閉じます。
 
 ナチス将校で強制収容所所長の父は、家族を愛する一人の人間でした。“あの人たちは私たちとは違う”と言った母も、ユダヤ人が毎日“消されて”いくことには心から憤る人間らしさを持ち合わせていました。ヒットラー親衛隊に心酔する思春期の姉もまた、強制収容所のことをブルーノに教えるときにはその肩にそっと腕をまわしてやる思いやりにあふれていました。何故彼らには、ユダヤ人家族が同じ思いを味わっていることへの想像力が働かなかったのでしょうか。
 ブルーノの無邪気が、シュムエルへの残酷な仕打ちにつながりました。
 ブルーノの家族の善意が、ユダヤ人への残虐非道な仕打ちと結びついていました。
 良識あるはずの普通の市民が、ひとつ歯車が狂えば加害者にならないとは言い切れない。そのことを私たちに伝える厳しい映画です。

 
                              

 

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