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映画「嗚呼 満蒙開拓団」


                                                           
K・T

テレビの番組表などに “難民”という語句があれば、私たちはまず“パレスチナ難民”や“ダルフール難民キャンプ”などの問題を思い浮かべます。これらが深刻な問題であることは論を俟ちません。リアル・タイムで伝えられる“難民問題”の現実です。
しかし、今からたった60余年前、この日本が“難民”を生み出していたことは、同時代的にはほとんど伝えられてきませんでした。“中国残留孤児”“中国残留婦人”の帰国問題がとりあげられるようになってから、私たちの多くは初めて彼らの苛酷な人生を知るようになったのです。
映画は、東京地裁における中国残留孤児訴訟(憲法関連裁判情報中国残留孤児訴訟(1)〜(10)参照)の不当判決のシーンから始まります。原告団の方たちを“孤児”と呼ぶには、あまりにも歳月が流れてしまったことを、いまさらながらに痛感させられます。

中国東北部・黒龍江省の方正(ほうまさ)に、日本人公墓があります。残留婦人の一人が1963年に見つけた累々たる白骨の山は、祖国への帰還を果たせなかった満蒙開拓民の骨でした。その骨を拾い埋葬したいと願った彼女の思いは、中国県政府から省政府へ、そして中央政府・周恩来総理の元へと届けられ、中国の人たちの手によって日本人公墓が建立されたのです。映画は、この公墓をめぐる日中両国の人たちの思いを軸に紡がれています。

“中国残留孤児”“中国残留婦人”となった人たちのほとんどは、満蒙開拓団として国策によって満州に送り出された人、その家族でした。映画の中で敗戦の年の5月末に満州に到着したと証言される方がいます。報国精神と王道楽土の夢を、彼らに押しつけて送り出したのは、行政、当時の日本政府にほかなりません。敗戦の年の5月末といえば、既に米軍は沖縄に上陸、沖縄が修羅場と化していた頃です。満州の関東軍も主力部隊は南方に移動しており、満州内陸部・奥地は“丸裸”の状態。働き手の男性は招集され、女性・子ども・高齢者がそこにとり残されたのです。列車もトラックも全て軍人家族のために使われ、すがりつく開拓団民を振り払って引き揚げていったということが、人々の証言から明らかにされます。

彼らは、文字どおりの“棄民”、国家によって遺棄された人たちです。軍が守るのは軍組織であって、決して国民を守る存在ではない。そのことに思いを馳せるとき、満蒙開拓団と沖縄の人々との苦悩のつながりが見えてきます。
当研究所では、映画「軍隊がいた島 慶良間の証言」「やません 山本宣治の生涯」上映会(7月15日・19日)を行います。軍隊と戦争の本質について、改めて学ぶ機会となるでしょう。あわせてご案内します。


【映画情報】
製作年・国:2008年 日本 
製作:工藤充
演出:羽田澄子
配給:自由工房 公式サイト
時間:120分
上映館:岩波ホール(東京・神保町)で7月31日まで公開中
8月以降全国で上映 詳細はこちら

 
                                                           

 

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