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映画「消されたヘッドライン(原題:STATE OF PLAY)」


                                                           
K・T

見かけはぱっとしないが敏腕の中年男記者カル・マカフリー。WEBサイトで頭角を現した若い女性記者デラ・フライ。この対照的な二人が協力してワシントン・グローブ紙の特ダネを追ううちに、政治と社会の暗部に迫ることに。

ある黒人少年が何者かに銃で撃たれて死亡、それを目撃したピザ配達人も撃たれて重体。同じ頃、連邦議会議員の若い女性秘書が地下鉄駅構内で不審死を遂げる。全く無関係に見えるこの二つの事件のつながりに気づいたカルは、事件の背後を追います。女性秘書を喪った気鋭の連邦議員スティーブン・コリンズは、国防総省の一部事業民営化に関する公聴会の委員長として、軍事の民間委託で膨大な利益を目論む民間軍事企業ポイント・コープ社と厳しく対立していました。やがて、黒人少年やピザ配達人を狙撃した銃弾は、いわゆる特殊部隊兵士の所持する銃器によるものであることが明らかになります。ポイント・コープ社は除隊後の特殊部隊兵士を雇い、彼らを戦場に派遣するだけでなく、自らにとっての“邪魔者”を消そうとしているのか…?

映画に登場するポイント・コープ社によく似た名前の、ディン・コープ社という民間の“戦争請負会社”は実在する企業です。第二次大戦終結後、トルーマン大統領の肝煎りで余剰武器を吸収させ失業する兵士に仕事を与えるために作られました。政府との強い結びつきの下、いまや年間売り上げ20億ドルにものぼるといわれています。オバマ政権は米軍のイラクからの撤退とアフガニスタンへの派遣を政策としていますが、撤退後のイラク治安維持にこういった“戦争請負会社”を利用する可能性は高いとか(映画パンフレット 松本利秋国士舘大学政経学部政治学科講師の署名記事より)。

「あなたは、国民の税金で育てた兵士を(退役後に自分の企業で)使って、個人資産を2500万ドルも増やした」(コリンズ議員)。
戦争を絶好のビジネスチャンスと捉える勢力は、民間委託によって軍事予算を節約できると鼓吹しますが、そこには委託業務の独占を狙う戦争請負会社と政府高官との癒着が生じるのは必至。さらに、メディア・コープという名前の企業が、カルやデラの働く新聞社の親会社として圧力をかけていることが仄めかされ、軍・産・メディアの癒着関係を暗示しています。公聴会のシーンでは、アフガニスタンやイラクの被害の実相を示す画面も挿入され、“誰がこの戦争を望んでいるのか”を如実に物語っています。
日本国憲法前文と9条が、“自衛のため”の戦争をも含めたあらゆる戦争の放棄と戦力不保持を掲げていることの意義を再認識させられます。

ということを念頭におくと、この映画自体のラストの“どんでん返し”には、納得のいかないものを感じる人も多いのではないでしょうか。しかし、その“うらみ”を補うのは、新聞、という紙媒体のメディアに対する映画作り手の想いが随所に散りばめられていること。真実を追求し、市民国民の“知る権利”保障の一端を担う存在としてのジャーナリズムへの希望を託していることが感じとれる映画です。

【映画情報】
製作:2009年 アメリカ/イギリス
監督:ケヴィン・マクドナルド
時間:127分
出演:ラッセル・クロウ/レイチェル・マクアダムス 他
上映館:渋谷シネフロント他 全国で公開中

 
                                                           

 

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