法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

法学館憲法研究所

Mail info@jicl.jp
 
今週の一言
憲法情報Now
 憲法をめぐる動向
 イベント情報
 憲法関連裁判情報
 シネマ・DE・憲法
 憲法関連書籍・論文
 ■今日は何の日?
憲法Voice
研究所・客員研究員紹介
中高生のための憲法教室

憲法文献データベース
日本国憲法全文
リンク集
 
事務局よりお知らせ
賛助会員案内
メールマガジン
ご意見フォーム
サイトマップ

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>

 

映画「EAGLE EYE ― イーグル・アイ」


                                                           
K・T

息詰まるアクション、派手なカーチェイス。この映画の表面だけを観れば、そのエンターテイメント性に目を奪われてしまうかもしれません。
しかし、本作は憲法というものの視点からみて、大きな問題提起を投げかける作品と受けとめることもできるのではないでしょうか。タイトルのイーグル・アイは、何を意味するのか。アメリカの国鳥は、Bald EAGLE(白頭ワシ)。イーグルは、
はアメリカ国家を象徴する鳥なのです。

アメリカ国防総省。テロリストと目される“標的”を捕捉したアメリカ空軍は、“テロリストか否か”の本人照合の不十分性を理由に攻撃中止を求めるコンピュータの警告を無視して、千載一遇のチャンスとばかり、周辺の村人を巻き込んで爆撃を敢行。これが事の発端でした。そこから場面は一転、大学も中途で止め、職を転々としながら今はコピー会社の社員で、家賃も滞らせがちな冴えない主人公ジェリーの元に、一卵性双生児で空軍広報部に務めていた兄の突然の訃報がもたらされます。そしてここにもう一人の主人公、大統領の前で吹奏楽を演奏するメンバーに選ばれた幼い息子をワシントンに送り出すシングルマザー、レイチェル。二人はそれぞれ、携帯電話などを通じて、謎の女性の声から、不可解な警告や指示に翻弄されてゆきます。テロリスト容疑でFBIに拘束されたジェリーを脱出させ、息子の命を人質にレイチェルを脅迫し、やがて二人を合流させ、その行動を思いのままに操る正体不明の存在。何がこの二人を操っているのか。正体不明の存在の、その目的は何か。

正体不明の存在が二人の行動を操り、目的遂行のためにとる手段は巧妙極まりない。携帯電話、街角のデジタル表示、信号機やクレーンの遠隔操作、航空輸送のバッゲージシステム、そして極めつけは、ATMその他防犯装置の監視カメラ。その“存在”が、アメリカ全土に張り巡らされた監視カメラの画像を駆使する様は、映画の中で執拗に繰り返し描かれます。このようなことを為しうる“存在”といえば…。

本作の創案はかのスティーブン・スピルバーグ(製作総指揮)。内容を知った上で、このアイディアが10数年前に遡るものときけば、驚きを禁じえません。映画の元になったアイディア自体は、“テロとの闘い”が標榜されるよりも遥か以前に生まれていたわけです。 10数年前であれば、“謎の存在”の正体含め、本作は“SF”映画となっていたでしょう。しかし、現実の方が先に進んでしまいました。本作は、“テクノロジーの脅威”を描き出すはずだったのが、それに留まらず、奇しくも“監視社会・アメリカの脆弱性”と“テロの脅威よりもテロ対策の脅威”とを暴露するものとなったのです。それも、“いまそこに在る”リアルな脅威として。それを批判するところまで本作が突き詰めているかどうかはともかく。

憲法的な視点からみたときに、本作のポイントは、二つあると本稿筆者は考えます。
一つは、監視社会・監視国家の陥穽です。ラストシーンで、多大な犠牲を払った末に国防省長官が次のような趣旨を述べます。「自由を守るために必要と思われた安全対策が、自由を脅かす結果となってしまった。」この“安全対策”なるもの、直接的には、“謎の正体”を指していますが、これを、9・11以後アメリカを席巻した治安対策と置き換えてみることもできるのではないでしょうか。
いま一つは、“謎の存在”が自己の行為を正当化するために、合衆国憲法の礎ともいえる “アメリカ国益を損なうような政府は、変えることができる”という抵抗権の原理を持ち出していることです。ここで問題となるのは、“国益を損なう”行為を誰が判断し、誰が“変える”ことができるのか、でしょう。少なくとも、映画に登場する“謎の存在”が判断・決定するようなことがあってはならないでしょうが、少数のパワーエリートであってもならないはずです。ここに、立憲主義と民主主義の緊張関係への問いかけが潜んでいるように思うのは穿ち過ぎでしょうか。


【映画情報】
製作:2008年 アメリカ
監督:D・J・カルーソ / 製作総指揮:スティーブン・スピルバーグ
時間:118分
出演:シャイア・ラブーフ/ミシェル・モナハン 他
上映館:渋谷ピカデリー他 全国で公開中

 
                                                           

 

[今週の一言][憲法情報Now][中高生のための憲法教室][憲法文献データベース][事務局からのお知らせ]
[トップページ]