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映画『石内尋常高等小學校 花は散れども』


                                                           
H.T.記

 現役最高齢の映画監督・新藤兼人さん(96歳)の最新作です。240本の映画脚本を書き、48本の映画監督を務めた方とは思えない、なんとも若々しさ、瑞々しさ溢れる作品です。それは、「平凡だけれども真っ直ぐな生き方」を身をもって実践し子供たちに教えた小学校時代の監督の恩師と、その薫陶を受けた若き日の監督自身の自伝的な姿を描いているからでしょう。

 「ごく普通の先生で、先生というよりお父さんという感じでした。一応広島の高等師範は出ているのだけれど、インテリくさくないどこにでもいる優しい先生で平凡な一教師で終わりました。覚えているのは、『嘘をつくな』という言葉です。外からは平凡に見えても一人ひとりは一生懸命生きている。そんな先生の『偉大な平凡さ』を是非描いてみたいと思った」とのことです(読売ウィークリー9月28日号)。監督は最近10年くらいの教育現場の荒廃に心を痛めており、「教育」をテーマにした映画を作りたいと考えていたそうです。細かい知識よりも、「偉大な平凡さ」と「真っ直ぐな生き方」を子供たちに強く植え付けた先生の姿を再現することによって、今の時代に失われつつある一番大切なものをすがすがしく伝えていると思います。

 舞台は大正の終わりから昭和の初めの頃、監督の母校だった広島県石内村の「石内尋常高等小學校」の5年生の教室。32人の生徒たち(当地の生徒たちが出演)の瞳がきらきら光っています。あけっぴろげで“何でも本気”の市川先生(柄本明)。授業中居眠りした生徒を本気で怒りますが、田植えの手伝いで寝不足だったと分かると本気で謝ります。小学校時代の監督を演じる級長の良人の母のあまりにも薄幸な死、そして貧乏故に中学校に進学できない良人の身の上を心から心配します。

 それから30年後の実話。村の料理屋での同窓会。元生徒たちは戦中戦後の親にも言えないような辛い出来事を口々に市川先生にぶつけます。一人ひとりが偉大な平凡さを実践してきたのでした。先生は正座して苦渋に満ち食い入るような表情で対峙します。東京で売れない脚本を書き続けている良人(豊川悦司)に対しては、「偉い人にならんでもいい。前を向いて行くんじゃ」。

 料理屋の女将は良人の初恋の人みどり(大竹しのぶ)でした。みどりの変わらぬ良人への激しい想いと良人の将来を案ずる気持ちの分裂は、観る人の心を揺さぶります。

 間もなく市川先生は退職し、子供の声が聞こえる石内小学校の隣に居を構えますが、脳卒中で倒れます。話すのもままならない先生が搾り出す一言一言が見舞いに訪れる生徒たちの胸に刺さります。

 平凡な人を主人公にしたのは初めてで難しかったと監督は語っています。それでも、“戦争と平和”“教師と生徒”“愛とエロス”という生涯追い求めてきたテーマを、破天荒なキャラクター造形、美術監督の経験を生かした美しい田畑や海辺の光景、随所にはさまれたユーモア等を通して骨太に描き切った100歳にならんとする監督の気迫には感服しました。
 「監督健康管理 新藤風」という見慣れない字幕もユーモラスです。撮影中監督の車椅子を押したのは、お孫さんの新藤風さん(映画監督)でした。

 監督は、間違ったことに対して苦笑いしたり見ているだけの現代の風潮は大人に大きな責任があること、正直にまじめに生きることこそ面白く、かつ挫折を乗り越える真の自信になるということを高い地位にいる人や教師は言って欲しいと語っています。それは決して“古臭いこと”ではないと。

【映画情報】
製作:2008年 日本
監督・脚本・原作:新藤兼人
時間:118分
出演:柄本明/豊川悦司/六平直政/川上麻衣子/大竹しのぶ
上映館:全国で公開中
公式サイト

 
                                                           

 

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