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映画『女工哀歌(エレジー)』


                                                           
H.T.記

 私たちがはいているジーンズの多くは中国で生産されています。衣料品に限らず、今や“世界の工場”となった中国。安価な中国製製品は、私たち、そして世界の人々の生活を支える不可欠な存在です。では、あなたは、中国の労働者たちの生活に思いをはせたことがありますか?
 この映画は、圧倒的なコスト削減を進めている中国のジーンズ工場で働く10代の女工たちに密着した迫真のドキュメンタリーです。制作スタッフが拘束されたり、撮影済みのテープを没収されたりしながら、政府の役人の監視の目から隠れて撮影された大変貴重な作品です。

 かつての日本の女工の悲惨な状況は、『女工哀史』(1925年)や「あゝ野麦峠」(1968年)などで知られています。今回紹介する映画は、現代中国版『女工哀史』です。ブームになっている小林多喜二の小説「蟹工船」の時代もほうふつさせる作品です。

 主人公はジャスミン・リーという16歳の少女。借金を返済できないため、農耕用の水牛までも没収されるような貧しい四川省の農村で家族と一緒に暮らしていましたが、生活できないため、都会に出稼ぎに出てきました。働くのは主に欧米諸国や日本へ輸出するジーンズを作っている工場です。当初の被写体である少女はおびえてしまったので、ジャスミン・リーを新しい主人公としてもう一度撮り直しました。

 女工たちがハイスピードで流れ作業をしています。朝9時までの完全徹夜をしても仕事が終わらず、続いて午後3時まで働くこともあります。眠らないように、両目のまぶたに洗濯バサミをつけられます。疲れ果て、ジーンズの山に埋もれて眠ってしまう少女たちを待っているのは2日間の給料に相当する罰金。残業代の多くは支払われません。中には禁止されているはずの14歳の児童もいます。年齢を偽造する書類は安価で入手できます。子供は従順で経営者に逆らわないため、都合よく使われています。

 彼女たちの居室はカーテンで仕切られた二段ベッドのある12人入りの部屋(3段ベッドの工場もあります)。おわん一つを持って食事を摂りにベッドに向かいます。その他職業安全衛生上も大きな問題が見られます。
 彼女たちの一番の不満は給料が安いこととその支払いが遅延することです。両親の生活の足しにするため送金することが最大の楽しみですが、送金できるのは僅か。残ったお金でジャスミンが最初に買いたいのは眠気防止のための精力剤です。

 賃金の未払いなど当局に訴えても取り合ってもらえません。また、中国には「労働組合法」はありますが、事実上は、ストライキはもちろん自主的な労働組合の結成は許されていません。しかし、相次ぐ給料遅配やたび重なる深夜労働にたまらず、ジャスミンたちは自然発生的にストライキを起こします。「首謀者は誰だ」と迫る警察署長出身の経営者。

 農村から都市への出稼ぎ労働者1億3000万人が程度の差はあれ、厳しい環境で労働しています。働くために辛うじて生きている人と生活を楽しむ人。その差は開いています。

 「ウォルマートのような小売企業がどうやって安い商品を作っているのか」を探ってみたかったと監督。商談に来る諸外国の業者の関心事は専ら品質と価格と納期。法規どおりの労働ではとうてい無理な条件を主張して譲りません。
 女工の賃金はジーンズの小売価格の2〜3%です。私たちが支払う小売料金は誰にどのくらい配分されているのでしょうか。グローバルな新自由主義経済のもとで著しく増えている株主への不労所得である利益配当を含めて、配分の公正・公平の実現を強く考えさせられます。シネマ「おいしいコーヒーの真実」にも現われていましたが、生産者や労働者が得る収入は、労働力の再生産費用も満たさず、非人間的です。「奴隷工場」と称するのは過言でしょうか。健気な少女たちの映像とともに、皆さんの眼でお確かめください。
 「中国独自の社会主義市場経済」と呼ばれる中国型の社会・経済体制はどうなるのかにも注目しつつ、映画で提起している諸問題は私たち自身にも関わる問題としてとらえる必要があるでしょう。

【映画情報】
製作:2005年 アメリカ
監督・撮影・製作:ミカ・X・ペレド
時間:88分
上映館:東京・渋谷シアター・イメージフォーラムにて9月27日から上映 全国順次上映
公式サイト

 
                                                           

 

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