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映画『今夜、列車は走る』


                                                           
H.T.記

 新自由主義理論によって経済活動の規制を緩和し、その重要な柱として民営化政策が断行されています。郵政など日本もその渦中にあります。しかしながら、その全貌や結果は国民の目に分かり易く説明されているとは言えません。
 その意味で、アメリカの影響を強く受けいち早く新自由主義政策が実行された南米諸国の状況は大きな教訓と示唆を与えてくれます。南米を語る場合、チリとアルゼンチンの実例がよく比較されます。両国とも、1970年代にクーデターによって成立した軍事政権が新自由主義政策をとり、80年代前半に経済は混乱し対外債務危機に陥りました。その後チリは市場原理主義を修正し経済の回復と貧困率の改善を見せています。これに対してアルゼンチンは、90年代にはさらなる自由化政策で民営化、労働規制の緩和を徹底しました。その結果、貧困・格差問題が深刻化し、21世紀に入って経済も破綻しました。

 日本の問題を考えるとき、一番の原点になるのはアルゼンチンだという評があります(内橋克人「悪魔のサイクル」、内橋・佐野誠「連帯・共生の経済を」(「世界」08年1月号所収)。

 この映画は、鉄道を中心に栄えたアルゼンチンのある田舎町の、事実を素材にしたフィクションです。鉄道員と言えば、それなりの安定した生活で従業員は誇りを持っていました。しかし、91年からの分割民営化政策で、ある日突然、路線の廃止が通達されます。交渉に臨んでいた組合長は、絶望して自ら命を絶ちます。組合員に促されたのは、2か月分の給料の支払いと引き換えの自主退職。失業した元鉄道員たちの必死の仕事探しが始まります。政府の支援はありません。カメラはそんな5人とその家族の姿を追います。ある者はポンコツの自家用車をやっと改造して割りの合わないタクシーの運転手に。ある者は、病気の子供の治療費を捻出するためピストルを手に命を張っての警備員に。そしてある者はサンドイッチマンに。他方、組合を裏切って金持ちになった者もごく一部に出ます。いわゆる二極化です。一人ひとりの個性の違い、存在感がずっしりと描かれています。

 セーフティーネットもなく突然放り出された彼らには何が待っていたか。それは生活苦だけではなく、人間の尊厳の破壊、自尊心の喪失、愛する家族とのすれ違いでした。中流層の崩壊です。

 やがて彼らを中心に、町には事件が発生します。サンドイッチマンになった初老の男性のグループがスーパーに強盗に押し入り、従業員を人質にします。時代を象徴する経済犯罪です。

 しかし、絶望する大人たちを見て、10代の子供たちが希望という「出口」を見つけ出そうと疾走します。自殺した組合長の息子も含まれています。子供たちは車庫に眠っていた機関車を引っ張り出し‥‥。

 原題は「次の出口」です。経済を効率化し目先の利益をあげることを目的とする政策をいつまでも続けていてよいのか、「次」は何なのか。未来に生きる子供たちから突きつけられた挑戦を真剣に受け止めないと大変なことになる、と感じました。

【映画情報】
製作:2004年 アルゼンチン
監督:ニコラス・トゥオッツォ     
原題:Proxima Salida
時間:110分
出演:ダリオ・グランディネティ/ メルセデス・モラン/ オスカル・アレグレ/
ウリセス・ドゥモント
上映館:東京・渋谷ユーロスーペースで公開中 5月より全国順次公開
公式サイト

 
                                                           

 

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