法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

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書籍『現在映画評論』


                                                           
H.T.記

 このホームページでもご案内した現代の映画が数多く(20本以上)採り上げられ、深く多面的な考察が加えられています。ご案内していない映画も少なくありません。DVDその他でご覧になる時の参考としても、大変有意義な書籍です。

 副題は、「映画が自由を奪われないために」です。著者の羽渕さんは、本書の趣旨を(1)「映画が自由を奪われないばかりか、いっそう自由な環境を獲得し、反戦、反核、平和と自由、現実と真正面から向き合う映画がさらに多く作られること」、そして(2)「テレビなどで大宣伝している映画に国民の鑑賞傾向が強まりがちな今日の状況を克服して、より多くの人たちが前述したような映画を鑑賞されることを願って」と書いておられます。

 今映画は、法的には基本的に自由に作られ、観ることができます。かつての日本の状況を思うと、大変幸せなことだということがよく分かります。著者は、第一章「映画が自由でなかった頃、映画法の時代」で、映画の検閲の歴史を追っています。それは1912年から始まりました。治安維持法が制定された1925年からは、映画検閲法が公布され、内務省による一元的な検閲が行われました。さらに1939年には「映画法」が公布され、統制が強化されるとともに、戦意高揚の国策映画一色となりました。大衆娯楽でありマスメディアである映画のあり方が国家にとっていかに重要な役割を果たすかを再認識させられます。
 4月7日の更新の際、「靖国」の上映中止問題でも触れましたが、今再び自由な上映が抑圧される時代になるか否かの岐路を迎えています。上映できないということは制作も萎縮させます。「現実と真正面から向き合う映画」を作るために闘った、岩崎昶、伊丹万作、亀井文夫、木下恵介各氏など、紹介されているキラ星のような群像に学ぶところは大きいでしょう。

 第2章は、立ち上がった「映画人9条の会」の力強い活動が書かれています。吉永さゆり、倍賞千恵子、ジェームス三木、秋野暢子さんらのメッセージもあります。

 第3章以下では、すぐれた作品の解説とともに、上記趣旨(2)のいかに鑑賞するかが熱く語られています。興行成績の上位を占めるのは、テレビなどの大量の宣伝力によるものが多く、人生や社会、時代と向き合うものは少ないようです。羽渕さんは日本の観客の鑑賞力の問題を採り上げ、山田和夫氏の言葉を引用しています。“観客の鑑賞力が高まれば高まるほど、映画人が資本の支配下でもよりよい映画をつくりうる条件が広がるのである”“映画という商品は、消費者の精神要求にこたえる”。そして、最近時代と向き合う映画が空前の大ヒットを続けている韓国のようすを紹介しています(「シルミド SILMIDO」「ブラザーフッド」「グエムル 漢江の怪物」など)。
 映画の鑑賞力と社会の意識のあり方は相互作用関係にあります。「映画力」を受け止め、さらに時代の要請に答える映画を作り広げるために、意識して鑑賞力を高めることは大変重要なことでしょう。
 
 2005年以降に上映された内外のすぐれた作品が数多く評論されています。個々についてはお手にとってお楽しみください。中でも「日本の青空」のレポートは詳細です。映画をご覧になられた方の復習としても役立ちます。なお、当研究所が共同制作し、マンスリー上映会を開催中の「戦争をしない国 日本」も、“国民の闘いの実写映像によって、説得力をもって九条の重要性を伝えようとしている”と紹介されています。

【書籍情報】2008年2月、光陽出版社から刊行。著者は羽渕三良さん。定価=本体667円+税。

 
                                                           

 

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