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映画『ビルマ パゴダの影で』


                                                           
H.T.記

 ミャンマーというと、国民の多数が仏教徒で信仰が生活に深く根ざしており、「パゴダ」と呼ばれる美しい仏塔が1000もある国として知られています。ビルマ仏教は自然との関わりも深いものがあります。

 しかし、この国はもう一つの顔を持っています。1962年以来続いている軍事政権による国民の抑圧です。1988年の民主化運動の盛り上がりの結果、1990年の総選挙でアウンサンスーチー女史が率いる国民民主同盟が圧勝しましたが、軍は政権移譲を拒否し民主化運動を弾圧しました。数千人の市民、学生、僧侶が殺害されました。そして昨年8月から9月にかけては、燃料値上げを機に再び大規模な民主化運動が起き、日本人ジャーナリスト長井健司さんが取材中に軍兵士により射殺される事件が発生したのは記憶に新しいところです。

 この、都市部における軍の弾圧は比較的私たちの耳に入ってきています。しかし、地方に住み、この国の民族の30%に及ぶ少数民族に対する一層苛烈な抑圧の状況は、これまでほとんど世界に知られてきませんでした。この映画は、この隠された少数民族に対する「民族浄化」とも呼ぶべき大規模な迫害を記録した貴重なドキュメンタリーです。副題が示すように、「もう一つのビルマ」です(国名は1989年、ビルマからミャンマーに変更されましたが、軍事政権を認めない人々は、依然として「ビルマ」と呼んでいます)。

 軍は、40年以上に及び少数民族や宗教的少数派が住む地方の住民を殺害、拷問、強姦し、無償で強制労働させ、家々や耕作地を焼き払い、村を抹殺してきました。彼らが戻れないように、地雷敷設もしました。民族固有の言語、宗教、文化、経済は滅ぼされ、生き残った人々は、ジャングルの中を移動しながら、軍から隠れて暮らしてきました。軍はジャングルの中まで数万人規模で捜索しています。追い詰められた人々は、タイ側国境地帯などに難民キャンプを自力で作ったり、国内避難民化して生死すれすれの生活をしています。

 監督のアイリーヌ・マーティーさんはスイス人女性です。スイスの観光用PR番組の撮影と偽ってミャンマーに入った一行は、身の危険を冒してジャングルの難民たちの姿を追います。まさに決死の取材。ジャーナリストとしての勇気に感銘を受けます。

 世界はミャンマーの軍事政権を事実上支えています。大国は武器を売ってもうけています。日本は軍事政権を真っ先に承認したり、日本に逃れてきた政治難民を退去強制させるなど、軍事政権を側面支援しているように見えます。戦時中この国を占領した日本として、ミャンマーの人々への対応は真剣に検討されるべきではないでしょうか。

 アイリーヌ監督は、パンフレットの中で、「映画の目的は、ビルマの人々の日常的な惨劇を世界に伝えることだと説明すると、彼らの眼差しに一点の希望の光が見えます。きっといつの日か国際社会の介入によって厳しい現実から解放されるという希望の光です」と書いておられます。

 観光でパゴタの美しさを観てきただけでは決してミャンマーが分かったとは言えないし、ミャンマーの人々との交流ができたとも言えないことを、この映画は強烈に教えてくれます。

【映画情報】
製作:2004年 スイス
時間:74分
原題:IN THE SHADOW OF THE PAGODAS - THE OTHER BURMA
監督:アイリーヌ・マーティー
上映館:東京・渋谷アップリンクで上映中
公式サイト 

 
                                                           

 

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