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映画『パレスチナ1948・NAKBA(ナクバ)』


                                                           
H.T.記

第二次大戦以来現在まで続く長期(60年間)かつ過酷な暴力による「民族浄化」として最大のものは、イスラエルによるパレスチナに対する迫害でしょう。最近ではイスラエル軍に包囲されたガザ地区の住民が、座して死を待つに耐え切れず食糧などを求めて分離壁を倒してエジプト側に一時なだれ込んだというニュースが小さく報道されました。この瞬間にも、パレスチナ人の難民キャンプでは射殺や餓死、栄養失調死など、後を絶ちません。にもかかわらず、イラクやアフガンの戦争のようにはでに報道されず、国連も世界も無関心でパレスチナの人々は絶望のどん底に追いやられています。残された道は「パラダイス・ナウ」に見られるように、自爆攻撃死だけしかないと考えるのも理解できます。

映画『パレスチナ1948・NAKBA(ナクバ)』は、この対立の根源に遡って考えることを迫る極めて貴重なドキュメンタリー映像です。「NAKBA」とは、「ナクバ=大惨事」を意味します。現代の世界でこれほど理不尽なものがまかり通って来たのか―国際的に有名なフォトジャーナリストの広河隆一さんが40年間に渡って決死の“戦場のカメラマン”として撮影した膨大な映像の一部が公開されます。広河さんは「勝者が歴史を作る現代では、被害の歴史はかき消されていく。」と記しています。ユダヤ人のヨーロッパにおける悲劇は語り尽くされてきました。他方で、そのユダヤ人によるパレスチナ人に対する大虐殺の歴史はあまりにも知らされてきませんでした。

パレスチナは長い間イスラム国家の支配下にありましたが、ユダヤ人とアラブ人(パレスチナ人)の垣根もなく、お互いを認め合いながら共存してきました。しかし第一次世界大戦後、イギリスとフランスによって細かく分割され、保護国の名のもとに植民地とされ、しばしば衝突が繰り返されてきました。イギリスは、1917年、この地にユダヤ人の国家を建設することを目指すシオニズムの運動の後ろ盾となることを約してユダヤ人の戦争協力をとりつけました(バルフォア宣言)。パレスチナ人の悲劇はここから始まったとされます(広河隆一著「パレスチナ」岩波新書)。

映像は、1967年、23歳の青年広河さんがイスラエルに行き、当時平等で社会主義的な農業共同体として世界から注目されていたイスラエルのキブツと呼ばれた農村に研修生として働いていた頃から始まります。広河さんはそこで、気がかりな風景と出会います。サボテンが群生する「白い廃墟」。それはかつてパレスチナ人が暮らしていた村の跡でした。やがて広河さんは、いくつものパレスチナ人の村がユダヤ人によって消されていったことを知り、衝撃を受けます。それは1948年のイスラエルの建国の際の出来事でした。

水が湧き出て果物が良く実る肥沃なこの地に先祖代々住んでいたパレスチナ人たちは、成年男性を中心に老若男女を問わず虐殺され、あるいは武力で追放され、消滅したパレスチナ人の村は400以上。生き残りの家族が離散し、周辺国に難民として逃れた者約70万人。1967年の第三次中東戦争では、イスラエルはそれまでパレスチナ人がかろうじて住んでいたヨルダン川西岸とガザ地区も占領し、以後そこにも入植し、パレスチナ人の居住区に対する襲撃を繰り返しています。レバノンなど周辺国に逃れた難民も含めて、イスラエル軍の最新兵器による虐殺が行なわれています。ジェニン、ナブルス、ベツレヘムなど廃墟のような街と化した所でやっと生き延びているパレスチナ人。追い出した村の跡に、豊かな農園やリゾート地、近代都市を建設して生活を楽しむユダヤ人の映像とあまりにも対照的です。この地に「正義」という言葉はあるのか、カメラは問いかけます。

国連の5常任理事国をはじめ、国際社会は何ら有効な手を打たないまま放置しています。のみならず、軍事、資源、交通の要衝の地にイスラエルという国家を置くことによって、中東を分断支配することに利用しようという意図も見られます。しかし、かつてのように、異民族が共存するシナイ半島を建設することは可能なはずです。平和と共生の理念が支配する国際社会の建設を目指す憲法を持つ日本として果すべき役割は何か、考えさせられます。

難民たちを見つめる広河さんの温かい眼、緑豊かな先祖の地への復帰を夢見る人々の遠くを見やる眼が大変印象的です。

【関連映画情報】「ガーダ パレスチナの詩」

【映画情報】
製作:2008年 日本
監督・撮影・写真:広河隆一
製作:森沢典子
時間:131分
上映館:東京・渋谷ユーロスペースにて3月22日(土)よりロードショー、ほか全国順次公開 
公式サイト 

 
                                                           

 

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