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映画『北辰斜にさすところ』


                                                           
H.T.記

“北辰(ほくしん)斜にさすところ”―戦後まで歌い続けられた旧制第七高等学校(現鹿児島大学)の有名な寮歌です。鹿児島では、北辰=北極星は北天に低く見えます。

この映画は、発起人である大阪の廣田稔弁護士の「伝えたい志がある。残したい想いがある」という情熱から始まりました。今の高校や大学では想像もつかない、青春を謳歌した旧制高校生たちのいい意味での、気宇広大で自由な雰囲気、熱いロマンティズム、その青春を奪い取った戦争への計り知れない怒り、戦争の歴史を今なお正視しない平成時代の政治や社会へのやるせなさが伝わってきます。

冒頭のシーン。1926年、第七高等学校の寮である造士館では、ライバルである熊本の第五高等学校との対抗野球戦の勝利に酔いしれ、寮歌の大合唱が行なわれていました。中心には、ミスター七高生としてその名を轟かせる草野正吾(緒形直人)応援団長がいました。白線帽、黒マント、高下駄の蛮カラ。「天才的な馬鹿になれ、馬鹿の天才になれ」という破天荒な寮での切磋琢磨の共同生活。ローソクを灯して勉強も良くしました。
廣田弁護士は、システム化、画一化された今の学校教育のあり方に疑問を抱き、人間教育のあり方を探る一つとして問題提起なされたようです。

場面は一転して、戦後60年、85歳を迎えようとしている上田勝弥(三國連太郎)のもとに、第七高等学校野球部創部百年を記念して旧第五高との記念試合の案内状が届きます。上田は、第七高等学校の野球部のエースとして活躍し、その後軍医として出兵、戦後は開業医を営んでいました。しかし、上田は誰の説得にも応ぜず、「ワシは行かんよ」と断ります。彼は、尊敬し慕っていた同郷の先輩・草野(応援団長)を、従軍した南方戦線で置き去りにした、思い出したくない過去があったのでした。負傷した草野を。「南方の島々に、海の向こうに、帰ってこんもんが、いっぱいいるんだ」。戦争の歴史をきちんと総括して遺骨収集することよりも、自衛隊の海外派兵に熱心な今の社会への強烈なアンチ・テーゼです。第五高との記念試合はどうなるのでしょうか…。

主演する三國連太郎さんも、中国戦線に従軍しました。今の日本の雰囲気が当時と良く似ていると危機感を持っての出演です。映画には、三国さんの他にも戦前を知る80歳前後の名優がたくさん出ています。まさか今の日本が戦争するなんてことはあるまい、今は自由で平和な時代だと思っている、あるいは思いたい私たち…。多くの示唆を与えてくれる作品です。

【映画情報】
製作:2007年 日本
監督:神山征二郎
時間:111分
出演:三國連太郎/緒形直人/林隆三/佐々木愛/織本順吉/北村和夫/神山繁/坂上二郎/鈴木瑞穂
上映館:東京・シネマスクエアとうきゅうにて公開中 全国順次公開
公式サイト

 
                                                           

 

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