法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

法学館憲法研究所

Mail info@jicl.jp
 
今週の一言
憲法情報Now
 憲法をめぐる動向
 イベント情報
 憲法関連裁判情報
 シネマ・DE・憲法
 憲法関連書籍・論文
 ■今日は何の日?
憲法Voice
研究所・客員研究員紹介
中高生のための憲法教室

憲法文献データベース
日本国憲法全文
リンク集
 
事務局よりお知らせ
賛助会員案内
メールマガジン
ご意見フォーム
サイトマップ

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>

 

映画『スタンドアップ』


                                                           
H.T.記

女性も、男性と同じように働いて自分の力で子供を養い、家も持ちたい、そしてたまには皆とビールも飲みたい。それが「生きている」ということだ。自由ということだ。この映画の核心はここにあるでしょう。
しかし、男性中心の社会や職場では女性自身の闘いなくして女性は「生きる」ことはできません。この映画は、20世紀末葉、アメリカで初めてセクハラ問題の集団訴訟を提起して勝利和解を勝ち取り、女性の地位の向上のための第一歩となった実話を素材にしたフィクションです。ここに描かれている二つの「スタンドアップ」は、観る人すべての魂を感動で深く揺さぶり、勇気を与えてくれます。男性優位社会を変えた一人の女性の闘いの射程距離は、職場における男性中心の打破にとどまりませんでした。

夫の暴力に耐えかね、二人の子供を連れて家を出たジョージー(シャーリーズ・セロン)は、故郷のノースミネソタの町に戻ってきました。そこは古くからの鉱山の町。16歳でシングルマザーとなり、父親の違う子供を連れて出戻ってきたジョージーに、両親や社会は冷たく接しました。しかし、自分の力で子供を育て、生きたいというジョージーの願いは強く、給料の良い地元の鉱山会社に職を求めます。
入った職場の圧倒的多数は男性でした。元々ある女性蔑視。それに鉱山の景気の悪さも遠因となって男たちは女性に仕事を奪われると感じていました。女性に対するむき出しの敵意と露骨な嫌がらせ。日常的に卑猥な言葉を投げつけられ、男性に押し倒されたりもします。それでも、ジョージーが自力で生活していくためには、この会社で働き続けるしか方法はありませんでした。ジョージーは男たちのセクハラと闘います。しかし、重役たち、労働組合、女性の同僚、父母、すべてがソッポをむきます。社会も「あばずれ女」を相手にしません。彼女は訴訟を決意しますが、弁護士さえ、勝ち目がない提訴よりも他の職場を探すことを勧めます。「法廷はもっとひどく、汚いよ」。

しかし、ジョージーは凄まじい圧力をはねのけ、提訴を実行します。たった一人で決行した「スタンドアップ」でした。提訴により迫害はますます激しくなります。ジョージーは、弁護士とともに同僚の女性たちによる集団訴訟の道を必死で追求し、一緒に闘おうと呼びかけます。集団訴訟(クラス・アクション)とは、企業の不法行為などで同じような被害を受けている人が多くいる場合、一部の被害者が全体を代表して申し立てる訴訟で、判決の効果は訴訟当事者だけではなく被害者全体に適用されます。立証や費用など種々の面で有利な訴訟活動ができます。集団訴訟が認められるためには、原告は最低3人が必要です。それでも同僚たちは、セクハラなどないと法廷で証言し、ジョージーは追い詰められます。ついに「もう終りね」の言葉。

しかし、法廷で彼女がシングルマザーになった(された)経緯が明らかにされる高校時代のシーンの再現から歯車は逆回転を始めます。きっかけは、証言台に立った彼女の高校時代のボーイフレンドに対する弁護士の言葉「スタンドアップ!」。「力のある者が弱い者を助けるために今何をすべきか」「立ち上がれ!友のために。真実のために」。

弁護士の言葉は法廷にいる全員に向けられたものでした。友人は真実を語り始めます。次いで死期の迫った同僚の組合員の女性が原告になることを名乗り出ます。そしてついに3人目の女性が法廷で立ち上がります。その後次々と立ち上がる同僚たち。他人のための、第2の「スタンドアップ」の瞬間で、鳥肌が立ちます。それは、じっと耐えるしか術を知らなかった女性たちの自分たち自身のためのスタンドアップでもありました。人権を獲得する(憲法12条、97条)ためには二つのスタンドアップが必要だということを教えている見事な演出です。

立ち上がることが縦糸だとすれば、映画にはさまざまな領域における男性の意識変革を迫る横糸があります。男性対女性の全面戦争と言ったらオーバーでしょうか。一つは上述の職場を変えること。二つ目は家族。ジョージーの父親や思春期の息子が変化します。三つ目は地域社会。そして、彼女の母親など、女性自身も変化します。これらの根底にあったのは、冒頭に書いたジョージーの思いです。特に家族への深い愛情は、この映画の第二の大きなテーマです。詳細は映画をご覧ください。

なお、主演はシャーリーズ・セロン。映画「モンスター」における演技には圧倒されましたが、今回も改めて驚嘆しました。彼女も大きな魅力です。

【映画情報】
製作:2005年 アメリカ
監督:ニキ・カーロ
原題 :NORTH COUNTRY
時間:124分
出演:シャーリーズ・セロン /フランシス・マクドーマンド/ ウディ・ハレルソン/ ショーン・ビーン
DVD:2006年6月2日 発売 3979円(税込)
公式サイト 

 
                                                           

 

[今週の一言][憲法情報Now][中高生のための憲法教室][憲法文献データベース][事務局からのお知らせ]
[トップページ]