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映画『オフサイド・ガールズ』


                                                           
H.T.記

 イスラム教の戒律の厳しいイランの女性たちを描いて世界で話題のジャファル・パナヒ監督。1995年のデビュー作『白い風船』でカンヌ映画祭新人賞、00年の『チャドルと生きる』ではベネチア映画祭金獅子賞(グランプリ)を獲得しました。『チャドルと生きる』に登場する女性たちは重苦しいものでした。しかし、今回の『オフサイド・ガールズ』では、タブーに挑戦する少女たちの個性的で元気はつらつとした行動に、爽やかや明るさを感じます。この作品はベルリン映画祭銀熊賞を獲得し、これで世界三大映画祭で受賞したことになります。

 06年、ドイツW杯への出場をかけたバーレーン戦が開かれるイランの首都・テヘランのアザディ・スタジアム。イスラムの戒律で、イラン女性は外出時にチャドルで頭髪や身体を覆うことを命じられているだけでなく、男性競技をスタジアムで観戦することもできません。女性が競技場に入ることは「オフサイド」(サッカーで、攻撃側がゴール近くでパスを行う際の反則)です。でも、どうしてももぐりこみたい少女たちがいました。

 彼女たちは、野球帽、ジャンパーにズボン姿で男装し、ゲートを通り抜けようとします。しかし、警備の兵士たちに呼び止められ、試合の見えない仮設の檻に放り込まれます。次々と連行されてくる女性たち。やがてスタジアムから熱狂した観衆の声が届きます。「なぜ入れないの?見せてよ」。あきらめようとしない少女たちに、兵士たちもたじたじです。女性差別の不合理さを突くエネルギー溢れるシーンです。

 厳しい検閲をくぐり抜けようとする監督の努力空しく、『チャドルと生きる』と同様、本作品もイラン国内では上映禁止になりました。イランはアメリカのブッシュ大統領によって、イラク、北朝鮮とともに、「悪の枢軸国」と指名された国です。イランに対する武力行使の検討も時おりニュースになりました。

 しかし、長い間の慣習はそう簡単に変わるものではありません。どのような社会にするか―それはその国の民衆自らが決め、変えていくべきものです。本作品も、したたかなイラン市民の力を観せています。このような作品を制作し、国外で放映してもおとがめなしということの背景にはイラン社会の変化もあるのでしょう。ちなみに、9月5日付けの報道によれば、イランの最高指導者の任免権を持つ専門家会議の議長に、改革派・穏健派のラフサンジャニ師が選出されました。
 
 この作品は、イラン社会の理不尽さを突き、自由や平等を獲得するための映画です。私はイランの少女たちやジャファル・パナヒ監督から勇気をもらいました。自由や平等は程度問題です。私たち日本も女性を差別していないか(例えば、生きていくうえで一番重要な労働現場を見ると、パート労働者の大半は女性であり、パート労働における差別は世界的に有名です)、「自由」社会のポイントである選挙運動の自由(参考:憲法MAP和歌山編)があるか(日本は先進国では例外的に極めて厳しい制限を課しています)、諸々の問題に対して憲法で謳っている「自由獲得のための不断の努力」(12条、97条)をどれほど行っているのか、一部の戦っている人々を放置していないか、改めて考えずにはいられません。

【映画情報】
製作:2006年 イラン
時間:92分
原題:OFFSIDE
監督:ジャファル・パナヒ
出演:シマ・モバラク・シャヒ/サファル・サマンダール/シャイヤステ・イラニ
後援:アムネスティ・インターナショナル日本
上映館:全国で順次公開中
公式サイト 

 
                                                           

 

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