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映画『ブリッジ』


                                                           
H.T.記

 全長2790メートル、高さ230メートル。世界から毎年900万人の観光客が訪れるサンフランシスコを象徴するゴールデンブリッジは、自殺の名所でもあります。これまで約1300人が66メートル下の海面に飛び込んでいます。04年から05年にかけての1年間、カメラは橋のたもとから望遠レンズで、橋の様子を毎日撮り続け、その間に飛び込んだ24人のうちの一部を映し出しています。

 橋から飛び降りた瞬間、「死にたくない」と思い体勢を変えて奇跡的に一命を取り留めた20代男性。10代からうつに悩み、母を癌で亡くした30代男性。統合失調症の40代女性。失業しアルコール依存症になった50代男性。病を治療する金がなかった人、恋愛や経済的な行き詰まりでうつになった人‥‥。
 監督は、「アンジェラの灰」など、多くの社会派映画の製作を担当したエリック・スティール。監督自身、弟を癌で亡くしその直後に妹も亡くして、一時絶望的になり自殺を考えたことがありました。それゆえ、「自殺したいと思う人々というのは自分からそう遠くない、彼らのいる世界は私自身の世界と異質なものではないという感覚が自分の中にあったんです」と語っています。自殺する人の心理の内側に迫る映画となっているゆえんでしょう。
 監督は身元不明者以外の約20人の遺族や友人らを訪ねて、無念の想いを聞きました。映画は、そうしたインタビューにも長時間を割いて、自殺の背景を探っています。
 日本でも毎年3万人以上の人が自殺するようになってから9年経ちました。今月7日の警察庁の発表によれば、昨年も全国で3万2155人の方が自殺しました。交通事故による死者の5倍に上ります。人口当たりの自殺率で、日本は先進国の中ではロシアに次ぐ高い水準です。昨年は、特に生徒や学生の自殺が増え、統計を取り始めた78年以降で最多となりました。これまで自殺は、「個人の問題」として放置される傾向にありました。昨年になってようやく自殺対策基本法が制定され、自殺の背景には「様々な社会的な要因がある」と指摘されました。しかし、それでも、2016年までに自殺率を20%以上減らすという控えめな目標に止まっています。

 「自殺大国日本」。子どもも大人も生きる意欲を奪われている人がたくさんいます。個人の尊重を最大の価値として掲げ、生命や幸福追求に対する権利を保障する憲法(第13条)とはあまりにもかけ離れた現実がここにあります。
 
 アメリカの映画ですが、自殺に至る理由は基本的に日本と同じです。「生きたい」という気持ちは、本来、誰も変わりがありません。橋の柵に足をかけた一人ひとりが命の重さ、尊さを訴えています。自殺を防止するには、個人として、社会として何ができるのか、考えさせてくれる映画です。

【映画情報】
製作:2006年 アメリカ
監督・プロデューサー:エリック・スティール
原題:THE BRIDGE
時間:93分
上映館:東京・恵比寿ガーデンシネマ、大阪・梅田ガーデンシネマで公開中、6月下旬以降全国順次公開
公式サイトhttp://www.the-bridge-movie.com/

 
                                                           

 

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