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映画『ツォツィ』


                                                           
H.T.記

 最近、アフリカを舞台にした話題作が目白押しです。このコーナーでも「ナイロビの蜂」「ダーウィンの悪夢」「ルワンダの涙」を採り上げました。絶対的貧困の中にいる人々が多いアフリカ諸国の映画は、現代の矛盾を鋭く問いかけるとともに、劣悪な環境の中で生きる人間の崇高さ、人間らしさとは何かを教えてくれます。

 「ツォツィ」もそんな映画の一つです。未成年者による殺傷シーンを理由に、映倫が「R−15指定」(15歳未満の鑑賞禁止)にしたため、映画鑑賞団体が、これほど命の大切さを感動的に描いた映画は、そんなにあるものではないと反発して、中学生にも見せる試写会が開かれた記事をご覧になった方も多いと思われます。

 国連が「人類に対する犯罪」と呼んだアパルトヘイトの廃止から16年たった南アフリカ。今や経済成長率も高く、2010年のサッカーW杯開催地として先進国から注目される国です。しかし、人口の8割を占める黒人の圧倒的多数は貧困から抜け出せません。教育格差に連続する就職格差で、若者の失業率は50%を越します。南アは「世界一の格差社会」とも呼ばれています。

 舞台は、最大の都市、ヨハネスブルグ郊外の黒人街ソウェト。掘建小屋はボロボロ、埃が舞い立つ道端、電気も水道もないスラム街。そこに暮らす主人公ツォツィ(タウンシップのスラングでギャングの意味)は、家族もなく、仲間とギャンブル、窃盗、暴力を繰り返す日々を送っていました。仲間があっけなくアイスピックで殺人をしても無表情。
 ツォツィは、ある日一人で裕福な黒人女性を銃撃して車を奪います。しかし、車の後部座席から不意に赤ん坊の泣き声。ツォツィは立ち去ろうとしますが、一瞬迷い、赤ん坊を大きな紙袋に入れて運びます。新聞紙をおしめ代わりにし、コンデンスミルクを泣きわめく赤ん坊の口に流しこみ、あたふたと苦闘します。途方に暮れて、同じくらいの赤ん坊を抱いた女の家に押し入り、おびえる母親に母乳を飲ませろと命令。授乳しながら赤子に優しく語りかける姿にと惑い、古ガラスで作った玩具をじっと見つめます。ツォツィの目に初めて優しさが宿ります。

 赤ん坊を奪われた女性がツォツィに対して示した態度は見ものです。凶悪犯として威嚇する警官の拳銃をしりぞけ、人間としてツォツィと向き合います。

 子供は生まれる環境を選べません。教育も受けられず、誰からも愛情を注がれることのなかった彼らにとって、自分以外は皆憎むべき存在であり、暴力で自分の生活を勝ち取ることしか知りません。

 憲法13条で規定している「個人の尊重」。これには「人は皆同じ価値がある」という意味があります。それは「国民」だけなのか。前文で規定する「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有する」という趣旨は「人は皆同じ」にも及ぶのか。考えてみる価値がありそうです。

 法学館憲法研究所では、浦部法穂主席客員研究員(名古屋大学教授)が、「世界史の中での憲法」について連続講座(ライブオンライン)を開設しています。私たちが何となくわかったつもりでいる「人権」や「国家」など、映画の理解に役立つことがらを突っ込んで考えるきっかけになるでしょう。

【映画情報】
製作:2005年 南アフリカ/イギリス
監督:ギャヴィン・フッド
時間:95分
原作 :アソル・フガード
出演:プレスリー・チュエニヤハエ/ZOLA/テリー・ペート
上映館:TOHOシネマズ六本木ヒルズ、シネ・リーブル梅田他全国で公開中
公式サイト 

 
                                                           

 

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