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映画「父親たちの星条旗」


                              
H・T記

硫黄島は東京都小笠原村に属する、世田谷区の半分くらいの小さな火山島です。1945年2月この島で、南方の島を次々と攻略してきた5万人を超す米軍を、2万人余の日本軍守備隊が迎え撃ち玉砕しました。太平洋戦争において唯一米軍の死傷者数(死者は6,800人)が日本軍のそれを上回った激戦となりました。その摺鉢山(169m)の山頂に6人の米軍兵士たちが星条旗を掲揚した瞬間を写した写真が米国民を鼓舞し、ピューリッツァー賞を受けたことでも知られています。この激戦が日米双方の視点から見る二部作として製作され、アメリカから見た本作品が最近公開されました。写真に登場する6名のうちの一人を父に持つジェイムズ・ブラッドリーが著わしたノンフィクション『硫黄島の星条旗』を基にしたものです。日本から見た「硫黄島からの手紙」も近く公開されます。アメリカから見ると、太平洋戦争は仕掛けられた戦争に民主主義国家として勝利した戦争であり、星条旗を立てた兵士は国民的な英雄のはずです。しかし、映画は、一人ひとりの兵士の生き様、戦闘行動をリアルに描くことによって、兵士を英雄扱いすることを峻拒しています。

戦場の迫力と修羅場のようすは文章で形容する言葉が見当たりません。そしてまた戦場の現実は映像ではとうてい表現しきれるものではないでしょう。摺鉢山の山頂に星条旗を掲げた6人の兵士のうち3人はその後間もなく現場で戦死し、残る3人は国に戻され、英雄として戦意の高揚や戦争継続のための国債の購入呼びかけに借り出されます。しかし、彼らの脳裏(否、身体全体)には戦場で斃れた戦友たちや殺した日本兵のことなど生々しい記憶が食い込んで常にまとわりつき、英雄視されることに激しい苦痛を感じます(星条旗を掲げた「英雄」の1人は別人でした。それを指摘した3人の訴えは聞いてもらえません。また、彼らが掲げたのは、2本目の星条旗でした。国家にとってはとにかく「英雄」を作ることに意味があることを端的に物語る場面です。3人はそれにも耐え難さを感じます)。そして彼らのこの苦悩を政府や軍の高官をはじめ周囲は完全に無視し、悪意さえ示します。戦争のために一時はもてはやされた3人ですが、結局はみじめな生涯を送ることになります。

戦争についてはいろいろな考え方や思想の違いがあります。しかし、戦争に勝ったか負けたか、戦争の目的が正しかったか否かという問題を超えて、そもそも戦争とはどんなに残虐なものか、それが人間の顔を持った兵士にどのような影響を与えるのか、ということをつきつめて考えさせられる映画です。「戦争を知っているという者ほど戦争を知らない」。ナレーションの一つです。この映画を集約していると思いました。(参考:東京新聞10月29日付け社説は、「彼ら(安倍首相ら)の改憲とナショナリズムの主張は、戦争に対する正しい認識を欠いたまま戦争できる国を目指しているのではないか、という不安を感じさせます。いわばバーチャルリアリティー(仮想現実)に基づく新憲法制定論です。」と述べています)

製作:2006年 アメリカ
時間:132分
原題:FLAGS OF OUR FATHERS
監督:クリント・イーストウッド
製作:スティーヴ・スピルバーグ/クリント・イーストウッド/ロバート・ロレンツ
原作:ジェイムズ・ブラッドリー、ロン・パワーズ共著 『硫黄島の星条旗』
主な出演者: ライアン・フィリップ/ジェシー・ブラッドフォード/アダム・ビーチ
上映館:全国にてロードショー中
公式サイト 

                              

 

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