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映画 「パッチギ!」

H.T記
                                                           

(C)2004「パッチギ!」製作委員会

 個性派の井筒和幸監督による、若者が国家や社会の壁に挑み「自分を乗り越えること」 ("パッチギ")及び「戦争と平和」について考えることをテーマにした骨太の青春群像劇。

 舞台は1968年の京都。府立東高校の空手部と、朝鮮高校の番長・アンソン一派は、激しく対立していた。東高のごく普通の生徒康介は偶然、アンソンの妹でフルートが得意なキョンジャに一目ぼれする。康介は、彼女が奏でる曲が、「イムジン河」という朝鮮半島に思いを馳せた歌だと知り、彼女と親しくなりたい一心で、ギターの弾き語りで「イムジン河」を練習し、朝鮮語の独学を始める。

 キョンジャや朝鮮人の間に入って行こうとする康介だが、日本人と朝鮮人という個人の力だけではどうしようもない壁に阻まれる。「もしも私と結婚することになったら、朝鮮人になれる?」とキョンジャ。「(俺たち)国空っぽになるほど連れて来られたよぉー!国会議事堂の大理石、どっから持ってきて、誰が積み上げたか?お前らニッポンのガキ、なに知ってる?知らんかったらこの先もずっと知らんやろ、お前、土手の野草食うたことがあるか?帰れ!」ふだんは温厚そのものの古老に一喝され、出て行く康介。ギターを加茂川の橋で思い切り叩きこわして川に投げ込んだが、ラジオ局でイムジン河を歌うことになる。しかし、それは発売中止の曲。表現の自由をめぐる局内の論争は今のメディアのあり方も投影している。

 なぜ、在日の人たちに罵倒されるのか。なぜ、「イムジン河」のレコードは発売中止になったのか。康介は渡れない河に入ろうとする…。

 井筒監督は書いている。「今の若者って、本当に打ちひしがれたことはないやろ。(映画の舞台となる)パッチギ時代の俺らは、ホンマに絶望に寝込むこともあった。今の若い子ら、どこか逃げ道を作ってる。そんな子らに絶望と孤独を一度きちんと受け止めて?楽しめ”といいたい。それが必ず力になるから。これが一番のメッセージや」(「アワビ」1+2月号より)

 ヴェトナム戦争あり。京都に修学旅行に来ていた長崎の高校生が朝鮮高校の女学生のチマ・チョゴリに垂らしたインクを発端とした修学旅行バス横転事件あり(実話)。全体として社会性と娯楽性を両立させている。もっとも、どこまでが笑いと皮肉なのか。ヘルメット姿の大学紛争など(風景描写か?)は浮いてみえる。売り物である乱闘シーンの濫発も、映画のテーマとの関係がファジーである。「戦争の否定」は観念的なものではなく、自分自らに潜む様々な暴力的な要素との徹底的に「戦争」して「乗り越える」ことから始まるのではないか。「最近10年間に観た日本映画の中ではベスト1」という宮台真司氏は、「絶対に分かり合えない者同士」が「身体的に共振できる」のが「感染」であり、「理解ではなく感染」が井筒映画のモチーフだという(「週刊金曜日」1月14日号の井筒監督へのインタビュー)。しかし例えば、「感染」だけでアンソンと日本人桃子及びその間に生まれた子供の間に「家族」が成立するのだろうか。
 とにかく、「北朝鮮との関係」を現在進行形の「同じ人間同士の関係」として見られる貴重なシネマであり、自分なりに考えることを宿題として残してくれる。

【註「イムジン河」
朝鮮半島を分断する38度線を貫いて北から南へ流れる川にたとえて、南北分断の悲しみを歌った曲。「イムジン河水清く とうとうと流る」に始るこの歌は、映画の全編を通し叙事詩として流れている。日本では1968年にザ・フォーク・クルセダ―ズが歌い発売しようとしたが、直前に政治的な理由で発売中止になった。2000年の南北統一会談を機に統一を願う歌として再び脚光を浴び、2002年にザ・フォーク・クルセダ―ズのオリジナル盤が発売された。

【制作】2004年
【監督】井筒和幸
【原案】松山猛
【音楽】加藤和彦
【出演】塩谷瞬 沢尻エリカ 高岡蒼佑 楊原京子 真木よう子 オダギリジョー 前田吟
【上映】1/22より シネカノン有楽町、渋谷アミューズCQN他にて全国ロードショー中
                                                           

 

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