教員が集う 中高生のための映像教室 『憲法を観る』
 
 
トップページ 普及事務局からのお知らせ 法学館憲法研究所の伊藤真所長が大東学園高校3年生に対して講演をしました
 
「憲法を観る」普及事務局を担当している法学館憲法研究所の伊藤真所長(=伊藤塾塾長・弁護士)が、2011年1月18日、大東学園高校3年生に対して「憲法と私たち」と題して講演をしました
2011年2月21日

伊藤所長ははじめに、住んでいる地域によって選挙での投票の価値の差異を解消し、文字通り「一人一票」を実現させる必要性を語りました。こんにち、たとえば兵庫県民の投票の価値は隣の鳥取県民の投票の価値の5分の1になっています。憲法の価値である民主主義の実現において「一人一票」の実現はその前提になるということを強調しました。つづいて、法律はなぜ正しいのか、というテーマに入っていきました。伊藤所長は、それは多数の人の意見に従って決められたルールだからだと説明しました。同時に、多数決は常に正しいとは限らない、ということも伝えました。9.11テロの後に多くの人々が支持するなかでイラク戦争が起こってしまったことや民主主義の体制のなかでヒトラーが台頭していったことなどを例にあげ、多数決ということの危うさを指摘しました。そして多数決によっても奪ってはいけない価値として人権というものがあるということ、多数決でもやってはいけないこととして戦争があるということ、それらが憲法には書かれている、憲法とはそのような性格のものであるということを説明しました。
法律は国民の自由を制限して社会の秩序を維持するためのルールであるのに対して、憲法は、国家権力を制限して国民の権利、自由を守るためのルールなのです。したがって、憲法を守る義務があるのは国民ではなく政治家などであるという立憲主義の考え方を説明しました。
伊藤所長は、憲法を理解する上で大切なこととして、イマジネーション(想像力)を挙げました。憲法はたとえ少数派であってもその人たちの人権を守るためのものです。したがって多数派の人たちも少数派の人たちの立場に立って考えることで憲法の存在理由を理解していけるのです。このことを沖縄の普天間基地の爆音に悩まされている人々などを例にあげて話しました。
憲法で最も大切な価値は「個人の尊重」(憲法13条)です。人はみな人間として生きる価値があります。その点ではみな同じです。お互いに誰をも同じように大切にしたいものです。同時に、人はみな違います。誰一人も他の人と同じ人はいないのです。人はみな違ってよいのです。人と違うということはすばらしいことでもあるのです。そのようなお互いがお互いを個として尊重しあい、自分との違いも受け入れて共に生きることが大切です。伊藤所長はそれが日本国憲法がめざす社会であると説明しました。
戦争は「個人の尊重」をうちこわします。日本はかつてアジアを侵略した反省から日本国憲法に9条を盛り込みました。それは、軍隊を持たず、一切の戦争をしない、という内容です。憲法前文には全世界の人々に平和に生きる権利があることが謳われています。軍隊を持たない国は世界にあまりなく、非常識との批判がありますが、憲法9条は100年後には世界の常識になるだろうと、伊藤所長は展望を述べました。そして、理想を持って生きていこうと話しました。
伊藤所長は映像教材「憲法を観る」を監修しましたが、今回の講演の内容もその観点を貫くものでした。
以下に、伊藤所長の講演を聞いた生徒の皆さんの感想の一部をご紹介します。

「日本だけではなく、世界中が平和・人権とたたかっているのだと思いました。日本だけではなく、世界中が平和になってほしい。子どもたち、大人たちが安心して暮らせる国になってほしい。」

「『憲法は授業で学んではい、おしまい』くらいとしか考えていませんでした。しかし先生の話を聞いて憲法は自分たちが世の中を生きていくために必要な知識で、自分の身を守る最大の武器であると初めて知りました。これを聞いてうまく世の中を渡っていく自信が少しもてるようになりました。本日は学校では教えてもらえない、世の中のルールを僕たち高校生にわかりやすく教えていただき、本当にありがとうございました。」

「憲法と法律は同じものだと僕は思っていました。でも法律は国民に対して社会の秩序を維持するためのもので、憲法は国家に対して国民が意見を言うものだと初めて知ることができました。今日は世界の現状やこれから成人して注意していくことなどを聞けてよかったです。」

「今までは選挙での一票の価値の差はどこでも変わらないと思っていました。しかし実際には場所によって1票と0.2票という差があり、平等ではないということを知り、残念でした。」

「憲法はむずかしいと思いました。多数決で決めていいことと決めてはいけないことがあることがわかりました。戦争はしてはいけないとあらためて思いました。」

「とても励まされる内容でした。特に全盲の方が弁護士になられた話は、とても意思の強い人なのだろうと思いました。自分だったら、そんな前向きに人の役にたてるようには思いません。そんな究極の状態においてのみ、人間の本質的な強さは現れてくるものなのかもしれません。いつか来るかもしれない事態に備えて、自分も成長しなければいけないと思いました。」

「憲法は弱い人を助けるということを聞いて、なんだか嬉しかった。これからは、憲法を頭の中に入れたいと思いました。」

「講演を聞いて、守られてきたと思っていた憲法が守られていなかったり、矛盾していることがあるとは思いもよりませんでした。今の自分に何ができるのか、何が大事なのかがわかり、よかったです。」