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「いじめ」はどのように、基本的人権を侵害するか
2010年7月19日
岡本 豊さん(「いじめから友達を守る会」元代表)
 

みなさんは、「いじめ」と聞いてどのようなことを想像するでしょうか?

集団リンチ。
みんなから、空気のように扱われる。
陰口を言いふらされる。

どれも深刻ないじめだと思います。
こういったことは、人が3人以上集まればどこでも起こります。
幼稚園や保育園・小中高校・大学・就職しても引退しても。
一生涯つきまとってくる問題です。

何故、人はいじめを行うのでしょうか。
昔、とある先生との会話の中で
「やられた側に問題がある場合もあるのではないか」という言葉がでました。
先生曰く
「クラスの協調性を損なうなど、本人が問題を抱えているケースがある。
  それを正すための手段として、『いじめ』はしょうが無いこともある」
というのです。

私はその先生に向かって激昂してしまいました。
「先生。その理論は『悪いことをしている人がいたら殺した方がいい』という理屈です。」

そう言ったのは、ある理由がありました。

小学校以来の親友がいました。
私は、小学校1年生の時に、2学期に転入してきた初めての転校生。
しかも、外国から転入してきたという物珍しさ満点の転校生でした。
クラスのみんなからの好奇の目。なかなか馴染めずにいたときに
「豊くんもみんなと一緒だよ」と仲間に入れてくれたのが後の親友
前島優作くんでした。

アイディアマンで人気者の優作くんは、2年生のときに
僕のあだ名を考えてくれました。
「ゆたか」くんは「たんじゅん」だから「ゆたじゅん」
〜「ゆたちゅん」てあだ名にしよう。

小学校6年間、途中でクラス替えもありましたが
ずっと同じクラスでした。

中学に入るとクラスが初めて分かれ、
部活も別々になってしまいました。
なかなか登下校の時間も合わず、会話する機会も減ってしまいました。

中学1年の3学期。
始業式の朝に、彼のクラスに用事があって訪ねました。
なんの気なしに優作くんの姿を探しましたが、居ません。
風邪でもひいたのかな、と軽く思っただけでした。

本当のことを知ったのは、始業式のとき。
校長先生の口から教えられました。
「1年1組の前島優作くんが
  昨夜自宅で自殺をしました。」

頭が真っ白になりました。
何かの冗談かと思いました。
「先生たちが、イジメ問題の教育のために嘘をついているのか」とすら思いました。
今思えばめちゃくちゃな理論です。
それくらい現実を受け入れられなかったんです。

教室に戻ると、みんなと一緒にいることができず
トイレにこもりました。
最初に芽生えた思いは、彼への怒りでした。
「なんで、親友だと思ってたのに相談してくれなかったんだよ。」

彼の遺書が見つかりました。

「あの4人にいじめられていた。
  ぼくは死ぬ ぼうりょくではないけど ぼうりょくよりも ひさんだった かなしかった。
  ぼくはすべて聞いていた。」

私は彼が「いじめられていた」ことすら気づいていなかったんです。
考えると、色々なことを思い出しました。

10月頃、登校中にたまたま一緒になったときに
「最近よく眠れない」と言ったことがありました。

最後に話したのは、2学期の終業式の日。
帰り道、ひとりで歩いていた優作くんと一緒に帰りました。
なんとなく長く話したくて、回り道をして帰りました。
その時、彼が質問したのは
「自殺するとしたら、どんな方法がいいと思う?」ということでした。

彼がそこまで思いつめていて、
遠まわしに匂わせていたのに、私は何も気づいていなかったのです。

彼への怒りの思いは、後悔の念に変わりました。

それから、いじめ問題をなくすための活動を始めました。
中学3年のときは、放送委員会として「いじめを考える放送劇」を始めました。
高校2年の時は、いじめを無くすための中高生の活動「いじめから友だちを守る会」を始めました。
大学1年の時、小学校での授業をさせてもらうように頼み、何校かで授業を行ないました。
その後、県の人権講師派遣事業に登録され、県の講師として授業を行っています。

たくさんの人の相談をうけてきました。
だから、冒頭の先生の言葉に怒ったんです。
「先生!どのような理由があろうとも、いじめていい理由はありません!」

日本には、「出る杭は打たれる」という言葉があります。
他の人と違うことをする人は、攻撃されることがある。
だから目立つことは控えよう。
という意味で使われることがあります。
私はこの言葉が大っきらいです。
個人の個人らしさを尊重しないで、何が「基本的な人権の尊重」でしょうか?

「いじめ」は「いじめよう」としてされるものより、
無意識にされることがほとんどだと思います。

同じことをしても、傷つく人と傷つかない人がいます。
小学校のとき、悪ガキだった私に
先生は「自分だったらどう思う?」と問いました。
これは、無意味な質問でした。
「僕だったら平気だもん」
人はひとりひとり違うので、人によって嫌な言葉や
嫌な態度は違います。
自分がいたずらだと思ってやることが
相手にとっては、大きな傷になってしまうことがあるのです。

さすがに初対面の人に対して
深い理解をすることは無理でしょう。
でも、せめて普段から身の回りにいる人のことは
知りたいと思います。
この人は、何をしたら喜び、何をしたら悲しむのだろう。
100%理解することはできないけれど、
今より少しでも多く、その人の事を知ることはできます。
一生かけて練習し、上手になりたいと思います。
そして、その人が傷ついている時は何も言わず抱きしめてあげたい。

それが私なりの「基本的な人権の尊重」です。
みなさんはどう思いましたか?

 
【岡本 豊(おかもとゆたか)さんのプロフィール】

1999年に「いじめから友達を守る会」を発足。全国の中高生によるいじめ対策活動を行う。
2006年の就職に伴い、活動は休止。
2003年より長野県教育委員会に人権講師として登録し、県内の小中高校で講演活動を続ける。
2010年7月現在 26歳。福岡県在住。自営業プログラマとして生計を立てている。