教員が集う 中高生のための映像教室 『憲法を観る』
 
 
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憲法をより身近に
2010年7月12日
大澤 豊さん(映画監督)
 

 歴代の自民党政権は常に憲法改正を標榜してきた、その最大の論拠がGHQ(連合国軍総司令部)からの「押しつけ憲法」論でした。とりわけ、憲法改正に異常な執念を見せた、かつての安倍首相もそのことを国会で繰り返し明言しています。
  「いまの憲法は、日本が占領下という特殊な状況の中で、GHQによってつくられたもので、その制定過程に問題がある。いまこそ、日本人の手による日本の憲法をつくるべきだ・・・・」。
  果たして現憲法はGHQから「押しつけられた憲法」だったのでしょうか。その憲法成立に至る真相を、歴史的事実に基づいて描いてみたいと思い、映画「日本の青空」をつくりました。
  映画の概要は――。
  在野の憲法学者・鈴木安蔵を中心に民間人グループによる「憲法研究会」が結成され、「憲法草案要綱」が起草されます。その草案は、明治期の自由民権運動の指導的理論家・植木枝盛の「東洋大日本国国憲按」やドイツのワイマール憲法、フランス人権宣言など、諸外国のすぐれた憲法を取り入れた「国民主権」の民主憲法でした。GHQは、その「憲法草案要綱」を高く評価し、GHQ草案をつくるモデルにしたのです。その事実をアメリカ側(GHQ)の文書や証言で明らかにしながら、「推しつけ憲法」論を論破する、というストーリーです。
  映画は全国各地で上映され、数多くの感想文が寄せられました。
「これまで心の何処かで、“押しつけ憲法”を払拭できずにいたが、映画を観てスッキリした。これからは自信を持って憲法を守る運動に参加できる・・・・」。
  といった内容のものが多かったのに驚かされました。同時に、映画の持つ力を改めて認識した次第です。
  「日本の青空」の成功に伴い、全国から憲法シリーズとして第二弾を是非つくってほしいという要望を頂き、そのエールに押されるようにして、「いのちの山河―日本の青空U」をつくりました。
  映画の概要は――。
  岩手県の寒村・旧沢内村(現・西和賀町)は「自分たちで命を守った村」として知られています。深沢晟雄村長のリーダーシップのもとに、宿命と諦めていた「豪雪・多病・貧困」の三悪克服に村民総ぐるみで立ち向かいます。
  深沢村長には確固とした理念がありました。価値の根本は人間であるという哲学と、憲法第25条です。人間の尊厳を尊重する民主政治・村びとによる自治は、なによりも人間の平等性に立脚すべきものであり、人間に格差があってはならず、根源的には人間の生命に格差があってはならないという理念でした。
  1960年、沢内村は65歳以上の村民の医療費無料化を全国で初めて実施し、翌年からは60歳以上にするとともに、乳児の医療費も無料化します。この時、県では国保5割給付のもとで、10割給付は条例にも反し、行政訴訟を起こされることを懸念して、思いとどまるように指導します。しかし、深沢村長は「裁判されるなら受けて立つ。憲法11条、13条、25条に照らして、わたしは絶対に負けない。本来は国がやるべきことをやらないから沢内村がやるんだ。国は必ずあとからついてくる」と反論します。
  憲法を村政に生かし、村民の暮らしの中に浸透させた旧沢内村。その深沢村政の半世紀前を振り返り「地域主権」や『住民自治』について改めて問いかける映画です。
  この度の「中高生のための映像教室『憲法を観る』」の中で、旧沢内村の実践が、モデルとして活用されていますが、沢内村の「生命行政」からは学ぶことが多いので、当を得た選択だと思います。(第3章・地元をつくる―地方自治)
  中高生が憲法の基本を学ぶことによって、これまで遠い存在と思っていた憲法を、より身近に感じて欲しいと願っています。そのためにも先生方には画期的ビジュアル・テキスト『憲法を観る』を活用していただき、子どもたちが明日に希望を託し、生きる勇気が湧き出るような楽しい授業が展開されることを期待しています。

 
【大澤 豊(おおさわゆたか)さんのプロフィール】

有限会社こぶしプロダクション代表。
1935年11月、群馬県高崎市に生まれる。
山本薩夫、勅使河原宏、黒澤明監督らの助監督を務め、1981年、後藤俊夫監督、神山征二郎監督とこぶしプロダクションを設立。
以後、監督、プロデューサーとして活動する。