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マンガ「ワンピース」と「日本国憲法」(イラク派兵差止訴訟で学んだこと)(その1)
2010年6月21日
川口創さん
(弁護士・イラク派兵差止訴訟弁護団事務局長)
 

マンガ「ワンピース」と「日本国憲法」
  皆さんは,「少年ジャンプ」に連載されている漫画「ワンピース」をご存じでしょうか。 一言で言えば「海賊の冒険漫画」で,この漫画は世界的にも人気です(フィンランドの田舎の本屋にも置いてありました)。主人公のルフィーをはじめ,登場する「海賊」たちはみんな「個性的」で活き活きとしていて、お互いの「個性」を大事にする仲間思いの素晴らしいキャラクターばかりです。それが人気の理由の一つだと思います。登場人物は,それぞれの「夢」に向かって,冒険を続けています。
  自分の生活に置き換えてみた場合,毎日は「冒険」とはほど遠いです。学校での友達との仲も,それぞれの「個性」を尊重し合う,というよりは,「空気を読む」ことを優先して,自分の「個性」をむしろ出さないようにして周りに合わせてしまいます。
  でも,「みんな同じ」な「キャラクター」では,漫画は絶対面白くないし,自分たちが生きるこの社会も人生も楽しくない。それぞれが豊かな個性を発揮して,「違い」を「個性」として互いに尊重し合うからこそ,「豊かな人生」があり,「豊かな社会」となっていくのではないでしょうか。
  実は「日本国憲法」が目指している社会は,「ワンピース」で描かれている世界と共通していることがあります。それは,「それぞれの個性を尊重しあう,人間らしい豊かな社会をつくっていこう」ということを日本国憲法も目指している,ということです。
  日本国憲法には,「あなたが,ただ、あなたであるが故に素晴らしい。お互いを尊重しあおう。この国はあなたを一人の『個性』ある『人』として,最大限尊重します」ということや「あなたがあなたの『幸せ』を追い求めることはとても尊いことで,人として生きる上で大事な権利です」ということを書いています(憲法13条「すべて国民は個人として尊重される」「生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利」は「最大の尊重を必要とする」)。
  日本国憲法は,それぞれの個性が大事にされ,人として大事にされる社会を目指し,一人一人がそれぞれの自分の「幸せ」を追い求めること自体を,最も大事な権利としているのです。
  そしてそれぞれの個性が活かされるために,表現の自由や学問の自由,職業選択の自由なども人権として保障しています。

「個性」を踏みにじる「戦争」
「個性」が尊重され,それぞれの「幸せ」を求めるためには,戦争のない「平和」な社会が不可欠です。
  「ワンピース」でも,支配者である「天上人」を守るための「海軍」の「たくさんの兵士たち」が出てきます(大将とか、大佐とかではなくて)。「兵士たち」はみな戦争のための命令に従うだけの「個性のない」キャラクターとして書かれています。「海軍」は「戦争」をしていく「軍隊」ですから,命令は絶対です。そこに「自分らしさ」は認められません。
  「戦争をしていく」ということは,命を奪い合うだけでなく,人間性そのものを奪っていくということが分かると思います。
  「戦争が人間性を奪い、社会を破壊していく」。その大事なことを,僕らの先人は先の第2次世界大戦で学びました。そして日本国憲法は「戦争の放棄」をうたったのです。
  日本国憲法は「全世界の国民が,ひとしく恐怖と欠乏から免れ,平和のうちに生存する権利を有する」(憲法前文)とまで書いていて,平和に生きることが人として最も大事な権利なんだということをうたっています。
  「戦争」は,戦闘員だけでなく,多くの罪のない市民,子どもたちの命も奪っていきます。命をとりとめても,一生治ることのない障害が残ることもたくさんあります。
そして、戦争は昔の話ではありません。

今も続くイラク戦争と私たち
  2010年の今でも,アメリカはイラクやアフガニスタンにたくさんの兵士を送って戦争を続けています。イラクでの戦争は2003年3月からずっと続いています。
  一説には100万人ものイラクの市民が犠牲になったといわれています。劣化ウラン弾の影響で,脳のない赤ちゃんや脳が飛び出ている赤ちゃんなど,生まれてきてすぐに命を落とす赤ちゃんたちもたくさん産まれています。
  苦しんで死ぬためだけに,産まれてきた。これほど悲しいことがあるでしょうか。
  今、イラクでは「平和に生きる権利」がありません。
  2003年にアメリカがイラクに戦争を仕掛けることについては,フランスもドイツもロシアも中国も,多くの国々が反対しました。でも,日本の当時の小泉首相は,真っ先にアメリカのイラク戦争を支持しました。そして,その後,自衛隊を戦地であるイラクに送り出しました。日本政府は,日本国民向けには「人道支援」「国際貢献」だとさかんに宣伝をしてきました。
  しかし,実際に何をしてきたのか。実は、航空自衛隊は、戦地であるバグダッドまで,武装した米兵をドンドン送り込む,という軍事活動を行ってきました。武装した米兵たちは,バグダッドに着いた後,「掃討作戦」としてイラクの市民を「大量虐殺」していきました。その犠牲者はさきほどのイラクの市民の100万人の犠牲者数に含まれます。

【つづく】

 
【川口創(かわぐちはじめ)さんのプロフィール】

1972年埼玉県生まれ
現在名古屋第一法律事務所所属
イラク派兵差止訴訟弁護団事務局長